不妊症、妊娠治療と高血圧のリスクは? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

本論文は不妊症、妊娠治療と高血圧のリスクを大規模に調査したものです。

Fertil Steril 2015; 104: 391(米国)
要約:1993~2011年にNurses' Health Study II(NHSII)に登録した116,430名(25~42歳)についてアンケート調査を行いました。不妊症女性は高血圧のリスク増加とは関連はありませんでしたが、卵管因子の方では1.15倍有意に高血圧が増加しました。また、妊娠治療の内容と高血圧増加にも関連を認めませんでした。

解説:内因性(体内から出る)のエストロゲンは高血圧のリスク低下をもたらし、外因性(外からの投薬)のエストロゲンは高血圧のリスク増加をもたらすのではないかとされてきました。すなわち、ピルなどの使用により、レニン~アンギオテンシン系の作用増強が生じ、高血圧のリスク増加の可能性が示唆されています。本論文は、このような背景のもとに行なわれました。しかし、卵管因子以外に、不妊症、妊娠治療と高血圧のリスクには関連がないことが明らかとなりました。

卵管因子と高血圧の関連については、卵管因子の方にはSTD(性感染症)が多いため、社会経済的な側面が関与しているのではないかと、本論文の著者は考察しています。