子宮内避妊具挿入前の膣内ミソプロストールの有効性 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、処置4~10時間前のミソプロストール(misoprostol)膣内投与により、子宮内避妊具の挿入が容易になることを示しています。

Hum Reprod 2015; 30: 1861(ブラジル)
要約:2013~2014年に子宮内避妊具挿入を初めて行なった2639名のうち、挿入に失敗した104名(3.9%)を対象としました。104名をランダムに2群に分け、ミソプロストールかプラセボを膣内に挿入後4~10時間後に子宮内避妊具挿入を再トライしました。子宮内避妊具挿入失敗率は、プラセボ群で2.90倍に有意に増加し、帝王切開既往歴の方で0.36倍に有意に減少していました。

解説:これまでに、ミソプロストール使用により子宮内避妊具挿入が容易になるという報告が数多くなされていますが、RCT研究ではその効果は否定されています。しかし、ミソプロストールの投与経路や挿入前の時間がバラバラでした。本論文は、4~10時間前のミソプロストール膣内投与が有効であることを示しています。

ミソプロストールはプロスタグランジンであるPGE1誘導体です。胃粘液分泌促進作用、胃酸抑制作用があり、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の長期服用による胃潰瘍・十二指腸潰瘍の治療に用いられます。PGE1製剤は頸管熟化作用があるため、外国では誘発分娩前の頸管熟化薬として使用されています。また、ミソプロストールには子宮収縮作用があるため、妊娠中には使用できません(流早産のリスクがあります)。

帝王切開既往歴の方で挿入し易いというのは不思議な気が致します。今後の検討が必要です。