本論文は、職業や健康状態と精液所見の関連を初めて前方視的に検討したものです。
Fertil Steril 2015; 103: 1271(米国)
要約:LIFEスタディーは、2005~2009年に登録した避妊中の501組の夫婦に対し、避妊をやめてから1年間妊娠を目指していただくといった前方視的検討を行なっています。このうち、精液検査を行い、職業との関連を分析できた456名の男性(平均年齢31.8歳)について検討しました。重労働は精子濃度減少および総精子数減少に相関していました。しかし、シフト性勤務、夜勤、振動、騒音、高温作業、長時間の座位と精液所見との関連はありませんでした。高血圧症は奇形精子増加に関連していましたが、高脂血症や糖尿病と精液所見との関連は認めませんでした。一方、現在使用中の処方薬剤数と精子数には負の相関を認めました。
解説:これまで職業や健康状態と精液所見の関係について発表された論文は、横断研究、ケースコントロール研究、後方視的研究のみであり、前方視的研究はありませんでした。本論文は、LIFEスタディーという大規模な前方視的研究の中の精子と職業をピックアップしたものです。その結果、これまで男性不妊との関連が示唆されていた、シフト性勤務、夜勤、振動、騒音、高温作業、長時間の座位と精液所見との関連が否定的なものになりました。一方で、重労働、高血圧、処方薬剤数と精液所見低下の関連を認めました。
横断研究、ケースコントロール研究、後方視的研究で有意であるとされた事象が、前方視的研究で否定されることがしばしばあります。今後さらに大規模な前方視的研究が行なわれることを願っています。