Q&A744 33歳、AMH 4.09、採卵3回、良好胚盤胞なりません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 33歳、AMH 4.09、採卵3回
①クロミッド1錠×5日、ゴナピュール300×2、150×2、セトロタイド0.25、hCG5000→8個採卵(うち3個未成熟卵)→3個受精→3日目桑実胚1個、8分割G1 1個→5日目胚盤胞3BC 1個→6日目収縮して変性?→凍結できず
②クロミッド1錠×5日、ゴナールF150×3、ゴナピュール150×4、セトロタイド0.25、hCG5000 →11個採卵(うち6個変成卵、1個未成熟卵)→4個受精→3日目 12分割G2 1個、8分割G1 1個、8分割 G2 1個→6日目胚盤胞 4BB 1個、4BC 1個凍結→ホルモン補充法で4BBを移植→陰性
③ショート法、スプレキュア朝晩2プッシュ×7日間、クロミッド2錠×5日間、ゴナピュール300×3、Ryupuron 1A→6個採卵(うち2個変成卵)→3個受精(1個異常受精)→3日目 8分割 G2 1個、G3 2個→5日目 初期胚盤胞 1個、4CC 1個→ 6日目 3CC、4CC 1個ずつ→凍結できず
今の病院は3BCやCCの卵は凍結してくれません。受精方法は成熟卵13個中3個がふりかけで残りは全部顕微授精にしており、胚盤胞まで至ったのは全て顕微受精させたものです。主人の精液はクルーガーテストで正常形態率が基準を下回りましたが、量が多いので問題ないと言われています。三回目の採卵前には正常形態率も問題ない値に改善しました。
卵管は3年前の検査では通っており、タイミング法で一度化学流産したことがあります。ホルモン値も低温期のP4が少し低い以外は問題ありません。
採卵を3回もしているのに採卵2回目の2個しか凍結できておらず、評価も6日目4BBが最高でそれも陰性になってしまいました。転院すべきかどうか迷っています。転院したとしても今後も良好胚盤胞が得られないのではないか不安な気持ちでいっぱいです。今後どうしたらいいのかアドバイスいただけますとありがたいです。

A 「胚盤胞にならないと妊娠しない」という考えの医師が少なからずおられます。しかし、胚盤胞しか取り扱っていない施設から当院に転院された方は、初期胚(分割胚)で妊娠されることが日常的に起こります。体外環境は完璧ではありません。このような方が初期胚(分割胚)で妊娠されるということは、体内では胚盤胞になっていることを意味します。胚盤胞を経由しなければ赤ちゃんにならないからです。これは、体外環境が体内環境とイコールではないことを示しています。このような方では、体外環境より体内環境の方が優れているわけです。したがって、「胚盤胞にならないと妊娠しない」という考えは誤りです。

さらに、良好胚盤胞ありきのプランしか行なっていない施設では、妊娠できる可能性のあるCCやBCの胚を廃棄してしまうという非常に勿体ないことが日常的に行なわれています。CC胚の染色体正常率は40%、AA胚は60%、この差はわずか20ポイントしかありません。当院でもAA胚で妊娠せず、CC胚で妊娠出産される方も多くおられます。このように、可能性のある胚を廃棄してしまうのは、経験不足あるいはクリニック全体としての妊娠率が高いことをアピールする戦略とも見て取れます。なお、当院では、年齢制限や胚のグレード制限を一切おこなっていません。妊娠率は一切のデータ処理を行なわず、そのままのデータを素直に示しています。

また、33歳、AMH 4.09でしたら、(当院で行なっているような)その方に合わせた刺激を行なえば、15個程度の採卵が可能だと思います。採取された卵子も未熟卵や変性卵が多いため、実際に使える卵子が少なくなっていますが、それに関する対策が全く行なわれていないようです。ここも取るべき対策があります。

以上のことから、まだまだ改善の余地が多分にあると思います。転院を考慮するのもひとつであると考えます。