凍結融解胚移植で子宮外妊娠率低下 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

凍結融解胚移植で子宮外妊娠率が低下することは、これまで下記の記事でご紹介しました。
2014.12.3「凍結融解胚移植で子宮外妊娠が減少」
2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」
本論文は、その第3弾です。

Fertil Steril 2015; 103: 655(中国)
要約:2010~2013年に体外受精を実施した3183名、3340個の胚移植を後方視的に検討しました。結果は下記の通りです。

    移植   子宮外妊娠
新鮮胚 day 3    2.4%
    day 5    1.7%
凍結胚 day 3    1.9%
    day 5    0.3%
    day 6    0.5%

子宮外妊娠率は、新鮮胚は凍結胚より有意に高く、day 3胚はday 5,6胚より有意に高くなっていました。

解説:子宮外妊娠(医学用語では異所性妊娠)は1~2%に生じる疾患で、98%は卵管妊娠です。かつては、体外受精で子宮外妊娠が多いとされていましたが、凍結融解胚移植が盛んになった現在では、かえって子宮外妊娠率は減少しています。本論文は、そのデータを示したものです。

新鮮胚は凍結胚より有意に高い子宮外妊娠率を示した理由として、刺激周期が胚を卵管に押し込む、あるいは子宮内の着床環境を妨害する、また卵管が着床のシグナルを出す、などの説がありますが、いずれも証明されていません。そもそも卵管の細胞は、子宮内膜細胞と同様に受精卵を受け容れることができる構造であるということが明らかにされています。接着因子であるEカドヘリンが着床に重要な役割を担っているとされてますが、子宮外妊娠の卵管では発現が増強しています。また、胚の質が良くない場合に子宮外妊娠の確率が増加することが知られています。すなわち、胚側の要因と卵管および子宮内膜の受容能の要因が考えられます。