Q&A682 ☆チョコレート嚢胞と診断されました | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 31歳、第2子希望
2012年、第1子を自然妊娠・帝王切開にて出産。
その後妊娠せず、2014年秋から産婦人科に通いタイミング療法やhCG注射、内服等で不妊治療をしています。先日、子宮内膜症、チョコレート嚢胞と診断されました。チョコレート嚢胞は右に2.2cmです。月経時も全く痛み等の症状もなく、突然の診断でショックです。どうしても2人目が欲しいのにもう出来ないんじゃないか、どうしたら授かれるのか、この先の不安です。

A 2.2cmのチョコレート嚢胞であれば、そのまま妊娠を目指すのが得策です。もっとも、本当にチョコレート嚢胞であるかどうかは、毎月の超音波検査で判断する必要があります。チョコレート嚢胞と思っていたら、一時的な黄体(排卵後の卵胞の抜け殻)であることがしばしばあります。黄体の場合は自然になくなりますが、チョコレート嚢胞の場合はなくならないので鑑別ができます。

また、もしチョコレート嚢胞だったとしても、この程度であれば、通常と変わりないものとお考えください。

「子宮内膜症」とか「多嚢胞性卵巣症候群」などの病名がつく(=診断される)ことに極めて敏感な方が多いように思います。たとえば、「多嚢胞性卵巣症候群」なのでしょうか、「子宮内膜症」と診断がついてしまいましたが、本当にそうでしょうかなど、しばしば質問があります。しかし、病名は単に患者さんを似たような群に分類しているだけにすぎず、妊娠治療の実施という観点からすると何の意味もありません。「多嚢胞性卵巣症候群」であっても簡単に排卵する方もおられますし、「多嚢胞性卵巣症候群」でなくても排卵が難しい方もおられます。同様に「子宮内膜症」があっても生理痛がない方、「子宮内膜症」がなくても生理痛が強い方もおります。妊娠するために最も大切なことは、その方に最も適した治療法を選択することにあります。ある検査をしたり、ある薬剤を使用したときに、○○病と診断名があると保険が適応になります。そのような観点からは病名が重要ですが、治療の本質からは大きく外れています。カルテに「○○病」「○○症候群」と記載されていた場合には、私は「○○病」「○○症候群」なんだと落ち込まず、保険が効くように先生が配慮してくれたのだなと読み取ってください。