Q&A649 内膜が厚くなりません | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 42歳、流産1回(9週)
採卵を終了し、8個の貯卵があります(ただし使えると思われるのは半分くらいです)。昨年の夏からホルモン補充周期での移植をトライしているのですが、なぜか内膜が厚くならず3回目のやり直しとなりました。3週間ほどホルモンを補充していたのですが内膜は5~6mmほどでまったく反応せず、移植には程遠いです。ほとんど数値は変わりませんでした(なお、陽性判定の時は12mm、その後、流産後に一度トライした時は8.4mmで移植でした)。どうしてこんなに薄くなってしまったのか…クリニックの先生もやれることはすべてやりました、とのことなので完全にさじを投げた状態です。
鍼治療、漢方(サイレイトウ)も続けていますが目立った効果はありません。エストラーナテープ、プレマリン(プロギノーバ)、ペントキシフィリン、ビタミンEとC、アルギニン、よもぎカイロ、すべて効果的といえるものはありませんでした。
年明けに再び仕切りなおして移植しましたが、その時はテープは貼らず、自然排卵を待ち排卵後膣坐薬で黄体ホルモンを補充、移植時のE2は1600、P4は16、内膜7mm。4ABと3BCを移植して陰性でした。

A 流産後に子宮内膜が厚くならないことはしばしば経験します。特に掻爬術を行なった場合には起こりえますので、吸引法を選択するのがよいでしょう。また、移植時の内膜が何mmあればよいのかについては、最低6mm、7mm、8mm等、様々な意見があり世界的なコンセンサスは得られていません。私は8mmを選択しており、まずます良好な成績が得られていると考えています。

内膜を厚くする効果が期待できる方法の中で、上記に記載のない方法でトライしてみる価値がありそうなものは、G-CSF子宮内注入、スクラッチング、バイアグラ膣内挿入だと思います。

また、流産後に新たに生じた慢性子宮内膜炎により、内膜増殖が不良になっている可能性は否定できないと思います。このような場合には、抗生剤の内服が奏功します。慢性子宮内膜炎の検査は、当院の外来でご相談ください。