Q 36歳 予定日前の死産1回、胎嚢確認後の5週で流産1回、体外受精4回
卵巣刺激~採卵
1 生理3日目の胞状卵胞の数を重視されていますか。
2 アゴニスト法でhMGでの誘発で成熟卵も取れますが、未熟卵が多いです。個数は少なくて質の良い卵をと思い、クロミフェンでの誘発に切り替えてみようかと思いますが、胚盤胞移植&凍結までいけるか心配です。
3 ロング法のブセレキュア点鼻ですが、生理が早く来てしまい、生理初日から開始しました。点鼻薬は、排卵を抑制するためだけの意味なのでしょうか。卵を成熟卵にする役割もあるのでしょうか。生理当日からの開始になった場合は、体外受精は中止した方が良いのでしょうか。生理が早く来てしまったため、予定が変更となり仕事の関係上、病院へ行けるのが生理5日目の夕方になってしまいます。注射開始に問題はないのでしょうか。予定より早く生理となり、低温期になってすぐブセレキュア開始しました。以降、高温期のまま出血しています。これは、生理としてカウントして良いのでしょうか。
4 排卵誘発剤を使用せず、自然の発育では卵胞成熟時、まん丸いお月様みたいな形ですが、誘発剤を使用すると、数も増えるせいか、メロンの網状みたいになり、まん丸ではないですが、成熟卵が取れれば特に問題はないのでしょうか。
受精
1 未熟卵が採卵翌日に成熟卵になったとしても妊娠に至る確率はあるのでしょうか。
胚移植~妊娠
1 凍結のタイミングは、胚盤胞と2PNの受精卵では、融解胚移植を行った場合にどちらが妊娠率が良いのでしょうか。
2 移植ですが、2つ移植した方が着床しやすいことはありますか。
3 子宮内膜ポリープで子宮鏡を勧められました。ポリープができやすいのか、これで6回目です。体質の問題でしょうか。ポリープ切除後のタイミングで体外受精をする予定です。何回の生理を見送れば良いでしょうか。
4 担当医は、着床しているとしたら黄体ホルモンは分泌するため、移植後1週間でホルモン補充を中止してしまいます。これは、流産のきっかけにもなるような気がしていますがいかがでしょうか。ホルモンサポートは着床時期以降も行った方がよいでしょうか。
5 前回、生理周期22日目に移植し妊娠に至りました。、今回2日ほど遅くさせたいのですが、妊娠率は変わるのでしょうか。
不育症
1 不育症検査のスクリーニングに異常はありませんでしたが、次回の妊娠後は抗凝固療法を行う予定です。不育の医師(遠方の大学病院)からは、妊娠反応が出たらアスピリン、胎嚢確認後に抗凝固療法開始と言われています。私も移植から使用したいと思っていますが、大学病院の医師にはちょっとした質問も聞くにきけません。体外受精は近医、不育治療は遠方と、治療先が別れているので本当に不便です。
A ある方から多くの質問が寄せられます。いつも単発的な質問でしたので、その方の全貌がつかめませんでした。数回の質問内容をまとめてみたところ、問題点が浮かび上がってきたように思います。
卵巣刺激~採卵
1 生理3日目の胞状卵胞は、その月にどの程度の卵胞が発育するかを知る大きな手がかりになります。私は、AMHの数値と年齢である程度刺激法を決めていますが、胞状卵胞を見て変更することもしばしばあります。卵巣刺激をキャンセルすることもあります。
2 アゴニスト法で未熟卵が多い場合には、刺激方法の変更、刺激日数の延長、トリガーの変更や増量により改善する場合があります。また、クロミフェンでの誘発を行うと、個数は少なくて質が良くなると言う証拠はありません。
3 診察してみないことには何とも言えませんが、ロングにしても結果的なショートにしてもアゴニスト法ということに変わりはありません。このまま刺激開始して問題ないでしょう。様々な考え方がありますが、点鼻薬は排卵を抑制する目的とお考えください。
4 複数の卵胞が発育すると、まん丸い形にはなりませんが、これは異常ではありません。卵巣の容積には限りがありますので、卵胞同士が丁度「おしくらまんじゅう」をしているような格好になり、変形しメロンの網状になります。
受精
1 未熟卵が採卵翌日に成熟卵になった場合の妊娠は限りなくゼロに近いとお考えください。
胚移植~妊娠
1 2PNの受精卵の凍結でも、融解後に胚盤胞になれば、胚盤胞凍結で融解した場合と妊娠率は変わらないと思います。2PN胚の凍結を行っている施設は多くはありませんが、2PN胚凍結のメリットは、主観が入らずランダムに胚を選択できること、残りの胚発育がうまくいかず凍結できなかった場合の保険となることだと思います。
2 反復不成功の検討から、1つより2つ移植した方が着床しやすいという考えがあります。
3 子宮内膜ポリープができやすい方はおられます。子宮内膜掻爬術での摘出では何回もできてしまうようです。レゼクトスコープによる内視鏡手術(TCR)でしたら、確実に、ピンポイントにポリープのみ摘出が可能です。子宮内膜掻爬術の場合には、次の生理周期まで治療はできませんが、TCRでしたら当該周期の治療も可能です。
4 私は、ホルモンサポートは着床時期以降も行った方がよいと考えています。本当は赤ちゃんになる能力のある胚なのにホルモン不足のために育たなくなるという状況は勿体ない話で、それがホルモンサポートにより回避できるのならそうしたいと考えるからです。
5 ホルモン補充周期の移植は調整が可能です。2日程度遅くする分には何も変わりません。
不育症
1 不育症専門医と不妊症専門医が全く分かれてしまっている現状が問題なのでしょう。私は、研修病院や研究室の幸運にも恵まれ、26年前から不妊症と不育症に両方に携わってきた数少ない産婦人科医だと思います。不妊症と不育症の境界線上におられる方がかなり多いと推察していますので、私のような存在が貴重なのではないかと考えています。