Q&A309 子宮内膜症の再手術の是非 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 子宮内膜症
2009年 腹腔鏡下チョコレート嚢腫摘出術
2010年6月 妊娠治療開始
2010年11月 第1回目の採卵。
2011年10月 卵巣チョコレート嚢腫吸引・アルコール固定
その後採卵4回(採卵の度にチョコレート嚢腫吸引)
子宮内膜症の存在が卵子の質を低下させ体外受精の成績に悪影響を及ぼす可能性があるとネットで知りました。手術により卵巣予備能が低下する恐れがありますが、再手術を受けた方が良いのでしょうか。なお、1カ月前に採卵したばかりです。

A 子宮内膜症の有無で、体外受精の妊娠率は変わらないことが報告されています。つまり、体外受精は子宮内膜症が妊娠におよぼすデメリットを打ち消す効果があることになります。したがって、悪性化が疑われる場合を除き、再手術はお勧めいたしません。

また、採卵の際のチョコレート嚢腫吸引は感染のリスクがありますので、お勧め致しません。採卵の際には卵子へのダメージを防ぐため、膣内消毒が十分にできないからです。チョコレート嚢腫を経由しなければ卵胞に届かないようでしたら、穿刺せざるをえませんが、極力避けたいと考えています。なお、アルコール固定も卵巣予備能を低下させますので、これもお勧めいたしません。

妊娠治療専門クリニックでは、妊娠治療を主目的として診療を行っておりますので、チョコレート嚢腫の管理は、子宮内膜症専門の医師による定期的な診察を必ず受けるようにしてください。