☆甲状腺ホルモンとプロラクチン | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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甲状腺ホルモンとプロラクチンは連動しています。医学部の試験問題には頻繁に登場するので、医療者はよく知っていますが、一般の方はなかなか知るチャンスがないのではないかと思いますので、ホルモン動態をまとめてみました。


キーポイントはTRHというホルモンです。「TRH→TSH→fT4」とそのフィードバック機構によって甲状腺ホルモン分泌が調節されています。一方、プロラクチンの調節にはフィードバック機構がなく、TRHによる刺激とPIF(ドーパミン)による抑制で調節されています。なお、PIFはTSHを減少させず、プロラクチンのみを減少させます。ここで大事なのは、甲状腺ホルモンのフィードバック機構の中にプロラクチンが巻き込まれていることです。また、TRHがTSHとプロラクチンを増加させるのを利用したのが「TRHテスト」です。TRH刺激により、TSHとプロラクチンがどの程度増加するかを検査するもので、潜在性高プロラクチン血症の判断に用いられます。


甲状腺機能が何らかの理由で低下した場合には、甲状腺ホルモンであるfT4が低下します。すると、フィードバック機構によってTRHとTSHが増加しますが、同時にプロラクチンも増加します。この治療に甲状腺ホルモン製剤であるチラーヂンSを用いると、TRHとTSHが低下し、同時にプロラクチンも低下します。ドーパミン製剤のみを用いても、甲状腺機能を治療することはできません。

ドーパミン製剤を開発の歴史の順に並べると、パーロデル→テルロン→カバサールとなります。パーロデルには吐き気が強く出る副作用があり、内服できない方が非常に多い薬剤でした。その副作用を軽減すべく、上記の薬剤が開発されたという歴史があります。