Q&A61 PCOSの一般妊娠治療 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

Q 33歳、避妊をやめて3ヶ月で妊娠しましたが子宮外妊娠となり、右卵管を腹腔鏡下で摘出しました。その際、左卵巣が8㎝に腫れていたため一部摘出しました。腫瘍は良性でした。その後、不妊専門クリニックを受診し、多嚢胞制卵巣気味であるとのことで、セロフェンを1錠5日間を処方され、2ヶ月服用したのですが、今度は右卵巣が8㎝になりました。手術をした病院で、検査をしたのですが、悪いものではなさそうとのことで、一度生理が来たら様子を見て、よくなる傾向がなければ、手術とのことでした。今後の妊娠を考えたとき、多嚢胞性気味という状況が続いていたら、やはり薬によって排卵を誘発するしかないのでしょうか。そうすると、また卵巣が腫れてしまうのでは…と心配になります。卵巣が腫れることと、経口の排卵誘発剤の服用はやはり因果関係があるのでしょうか。

A 多嚢胞制卵巣気味と言われることは極めて多いのではないかと思います。あいまいな表現ですので、正真正銘の多嚢胞制卵巣症候群(PCOS)ではないのでしょうが、話だけでは何ともいえません。正真正銘のPCOSの場合には、セロフェン(クロミフェン)程度で卵胞が育つことはほとんどないように思います。注射も控えめに打つと効かず、ちょっと打つと卵巣がボコボコに腫れる(左右とも10cm以上、腹水も沢山)というのが本来の姿です。話の内容からすると、おそらく卵巣が腫れたのは黄体(排卵後の卵巣)の腫大だと思います。黄体の腫大はセロフェン(クロミフェン)を使用した場合に非常によく見られる現象です。このような方にとって、セロフェン1錠5日間は量が多いのかもしれません。1日おきにするとか、セキソビットに変えるなど、他のプランもトライしてもよいかと思います。多嚢胞性気味という表現がよくわかりませんが、投薬なしのプランもありえるかもしれません。正真正銘のPCOSの場合には、体外受精に進んだ方がよいことが多い(早道)と思います。