2012.11.4「男性ホルモンは女性にも必要？ その１」、2012.11.5「男性ホルモンは女性にも必要？ その２」で、女性にも男性ホルモン（テストステロン）が必要であることを述べました。本論文は、全ての年齢の女性で男性ホルモン低下は卵巣予備能が低下と関連することを示しています。
Hum Reprod 2013; 28: 1084（オーストリア）
要約：A：38歳未満の早発卵巣不全（卵巣予備能が低い）の方140名、B：40歳以上の生理的卵巣予備能低下の方166名、C：38歳未満の正常卵巣予備能の方49名（コントロール）のDHEA、DHEAS、テストステロン、フリーテストステロン、コルチゾールを測定しました。DHEASはA群B群がC群より有意に高く、テストステロンはA群B群がC群より有意に低くなっていました。また、3群ともにコルチゾールが一般集団より低下していました。
解説：男性ホルモン受容体のノックアウトマウス（ARKOマウス）では、卵胞発育がほとんどみられず（卵巣不全）不妊となります。前胞状卵胞が多数存在するものの、閉鎖卵胞ばかりとなり、胞状卵胞がほとんど存在しないためです。ARKOマウスの研究から、胞状卵胞の発育には卵子ではなく顆粒膜細胞の男性ホルモン受容体が関与していることが明らかとなりました（Mol Endocrinol 2010; 24: 1393）。つまり、男性ホルモンは、前胞状卵胞の発育を促進し、閉鎖卵胞になることを抑制するなど、卵胞発育に必須なものと考えられます。最近では、卵胞発育における男性ホルモンの必要性に関するヒトでの臨床データも散見されます。
DHEA とDHEASは女性ホルモンおよび男性ホルモンの原料です。高齢になればなるほどDHEA が不足することが知られており、しばしばDHEAサプリメントが用いられます（DHEASは臨床で測定する際の物質です）。本論文で卵巣予備能が低い方の男性ホルモン（テストステロン）が低く、DHEASが高い状態は、DHEA (DHEAS)がうまくテストステロンに変換できないことを示しています。DHEAサプリメントには効果がある方とない方がおられます。つまり、DHEAをテストステロンに変換できない方にはDHEAを投与しても効果がなく、テストステロンを補充すべきであると考えられます。