☆採卵後6日目の胚盤胞では凍結融解胚移植を! | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

凍結融解胚移植は妊娠するためのメリットが大きいことを述べてきました(2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇」2013.1.14「OHSSの予防」2013.1.17「凍結融解胚移植では子宮外妊娠のリスクが低下」2013.1.19「☆凍結融解胚移植のすすめ」2013.1.24「凍結融解胚移植では周産期のリスクが低下」)。本論文は、採卵後6日目の胚盤胞移植では凍結融解胚移植の妊娠継続率が高いことを示しています。

Fertil Steril 2013; 99: 389
要約: 新鮮胚と凍結融解胚で単一胚盤胞移植の成績を比較しました。胚のグレードと女性の年齢を同じ条件である930組(1860個)の胚盤胞を胚移植し、前方視的に妊娠10週までの妊娠継続率で評価しました。採卵後5日目の胚盤胞移植では両群とも同等の妊娠継続率(凍結胚60.9%、新鮮胚56.5%)でしたが、採卵後6日目の胚盤胞移植では凍結融解胚(54.3%)の方が新鮮胚(17.1%)より有意に高い妊娠継続率を示しました。

解説:着床の窓(implantation window)は少しの間しか開いていないと考えられています。ですから、そこからはずれてしまうと、妊娠できる胚でも着床できなくなります。その一例が、排卵前の黄体ホルモンの増加です。通常は、排卵後に黄体ホルモンが増加し、排卵から1週間後に着床の時期が合いますが、早く増加してしまうと、着床の時期も早く来てしまいます。本論文は逆に、胚の成長が遅いため、新鮮胚では着床の時期が合わなくなってしまうことを意味しています。このような場合には、凍結融解胚にすれば、大切な胚に妊娠のチャンスが生まれます。