☆BMIが高いと精子の状態が悪くなる | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

女性のBMI増加が卵子や妊娠率に悪影響であることはこれまで何度も紹介しており、男性のBMI増加も妊娠に悪影響であることもご紹介しました(2012.12.5「男性のBMIも妊娠に影響」)。本論文は、太っている男性は精子の状態が悪いことを示しています。

Hum Reprod 2012; 27: 2365
要約:不妊クリニックを訪れた450名の男性の精液所見とBMIを調査しました。BMI 25~29.9(肥満度1)は、精子の直進運動率と有意な負の相関を示し、不動精子率と有意な正の相関を示しました。また、BMI 30以上(肥満度2以上)は、精液量、精子濃度、運動精子数と有意な負の相関を認めました。腹囲102 cm以上(中心性肥満)精子濃度、運動精子数と有意な負の相関を認めました。これらの相関は、年齢、人種、喫煙、アルコール、投薬の有無、葉酸使用の有無で補正しても依然として有意なままでした。

解説:BMIが高いと男性の精液所見も悪くなります。本論文では、ウエストサイズ(腹囲)のことも載っており、「メタボリックシンドローム」との関連も示唆しています。
「メタボリックシンドローム」は、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性を高める複合型リスク症候群をひとつの概念に統一しようとして生まれた名称です。日本では、日本肥満学会などの8学会が診断基準をまとめ、2005年4月に公表しました。それによると、
 腹囲 男性85cm以上、女性90cm以上 が必須項目で、かつ
 血圧 130/85mmHg以上
 中性脂肪 150mg/dL以上 あるいは HDL(善玉)コレステロール 40mg/dL未満
 血糖 110mg/dL以上
の3項目中2項目以上をみたす場合を言います。
男女ともに体重管理に気をつけて欲しいと思います。「私のダイエット作戦」も参考にされてみてはいかがでしょうか。