☆電磁波の影響 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

電磁波の生殖機能に及ぼす影響について、まとまったレビューをみつけましたので、ご紹介します。多くは動物実験のレベルですが、読んでいるうちに恐ろしくなってきます。「昔に戻れ」ばよいのかも知れませんが、そんなのは「無理な話」となってしまうのでしょうか。テレビ、パソコン、電子レンジ、携帯電話のない生活は考えられませんから。

Clin Exp Reprod Med 2012; 39: 1
要約:電磁波の細胞への影響は、様々なメカニズムによります。電磁波によるDNA損傷、細胞増殖抑制、細胞分化抑制、酸化ストレス増加、蛋白合成阻害、細胞内カルシウム流入増加が報告されています。
動物実験では、脳ではメラトニン分泌低下(30~300Hz)精子では形態異常増加•アポトーシス増加•妊娠率低下(30~300Hz、300MHz~3GHz)卵子では月経周期不順•卵胞成長低下(30~300Hz、3~30kHz)胚(受精卵)では分割率低下•胚盤胞発生率低下•奇形率増加(30~300Hz、3~30kHz、300MHz~3GHz)次世代への影響では精巣発生低下•身長体重増加(30~300Hz)が報告されています。
ヒトでの実験はできませんので、疫学(統計)調査となりますが、テレビモニター製造工場勤務の女性の流産率増加が報告されています。また、電子レンジ等の電子機器による影響は不明です。

解説:現代の生活に電子機器は欠かせませんが、テレビ、パソコン、電子レンジ、携帯電話などから電磁波が放出されています。1960年代から身体への影響が懸念され研究されていますが、様々な報告があり結論は出ていません。3Hzから30GHzまで様々な周波数の電磁波(電波)が使われています。超低周波(3~30Hz)は軍事用無線に、低周波(30~300Hz)は電子機器に、ラジオ波(3kHz~30GHz)はラジオや無線に割り振られています。たとえば、TVモニターは3~30kHz、AMラジオは3~30MHz、FMラジオは30~300MHz、携帯電話は300MHz~3GHz、無線LANは3~30GHzです。上記の報告からは、30~300Hzの電子機器と3~30kHzのTVモニター、そして300MHz~3GHzの携帯電話の電磁波の影響がより強く示唆されます。影響を最小限にするために、妊娠中はなるべくテレビや電子機器の近くを避けるような配慮が望ましいかもしれません。妊娠を目指す男性•女性も同様の配慮が望ましいかもしれません。なお、携帯電話の精子におよぼす影響については、2012.10.6「男性は携帯電話をズボンのポケットに入れないで!」でご紹介しました。