卵胞の成長速度は? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

地味で地道な研究からしばしば重要な真実が発見されます。カナダのBaerwaldさんは、卵胞の成長をひとつひとつ追って、貴重な成果を発表しています。本論文は、卵胞の成長速度が自然周期と刺激周期で異なることを示したものです。

Fertil Steril 2009; 91: 440
要約:自然周期(50名)、ピル周期(71名)、刺激周期(131名)の卵胞発育を毎日測定しました。刺激周期では1日あたりの卵胞の成長速度が1.69mmであり、自然周期(1.42mm)ピル周期(1.36mm)と比べ有意に速くなっていました。主席卵胞(最大卵胞)が選択されてから最大になるまでの日数は、刺激周期で5.08日に対し自然周期で7.16日刺激周期では約2日短くなっていました。自然周期とピル周期では、排卵に至る卵胞の方が排卵に至らない卵胞よりも成長速度が速く刺激周期では、排卵に至る卵胞の方が排卵に至らない卵胞よりも成長速度が遅いという結果でした。

解説:卵胞発育の研究ではBaerwaldさんをおいて他にはいないと思います。患者さんも毎日の通院はさぞかし大変だったと思います。体外受精では、毎日注射を打って卵胞発育を促します。一般的に、自然周期では月経周期の14日目に排卵が起きることが多いですが、体外受精では12日目に採卵することが多く、この差は確かに2日間になっています。また、刺激周期では大きくなる速度が速い卵胞は必ずしも良くないことを示しており、これは実際の採卵の際にもしばしば経験します。Baerwaldさんの論文はこの後もいくつかご紹介したいと思っています。