オメガ3脂肪酸の抗炎症作用 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

2012.10.8に「妊娠を目指す女性はお魚を食べましょう」と題してオメガ3脂肪酸をご紹介しました。本論文は、オメガ3脂肪酸の抗炎症作用についてまとめたレビューです。オメガ3脂肪酸には、アルファリノレン酸 (ALA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)があります。

J Am College Nutrition 2002; 21: 495
要約:同じ不飽和脂肪酸に分類されていますが、オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は正反対の作用があります。オメガ3脂肪酸には抗炎症作用があり、オメガ6脂肪酸には炎症促進作用があります。EPAは炎症反応のアラキドン酸カスケードを抑制し、オメガ3脂肪酸は細胞性免疫を抑制します。オメガ6脂肪酸:オメガ3脂肪酸の比率が増加すると、心臓の冠動脈疾患や炎症性疾患や鬱病の罹患率が増加します。慢性関節リウマチ、クローン病、潰瘍性大腸炎、SLE、乾癬(かんせん)、多発性硬化症、偏頭痛、喘息では、オメガ3脂肪酸(EPA, DHA)による治療の有効性が示されています。

解説:オメガ6脂肪酸:オメガ3脂肪酸の理想的な比率は1:1ですが、欧米人の食生活では15:1です。魚を良く食べる習慣のある日本人やエスキモー人の冠動脈疾患や炎症性疾患が少ないと、1980年代には報告されています。おそらく現代の日本人の食生活では、もはや理想的な比率とはかけ離れてしまっていると思います。アメリカのスーパーでは、オメガ3脂肪酸のサプリメントが山のように置いてありますが、日本ではほとんど見かけません。私は産婦人科医ですので、上記の疾患がどの程度増加しているのかはっきりはわかりせんが、このような疾患を持った患者さんをしばしばみかけるようになりましたので、確実に増えているとは思います。案外、病気の変遷は食生活の変化によって左右されているのかもしれません。