AMHによる閉経時期の予測 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

AMHは残りの卵子の数を示していますが、大きな個人差があります。AMH低値がわかった時、あと何年で閉経してしまうのか、妊娠のチャンスがどの程度あるのかが、最も知りたい情報だと思います。本論文は、AMHの数値だけでなく減るスピードにも個人差があり、閉経までの年数が異なることを示したものです。

Fertil Steril 2012, in press
要約:293名の女性(35~48歳)のAMHの変化と閉経時期を14年間にわたって調査しました。AMHの検出限界は0.10 ng/mL (Beckman Coulter)。閉経(1年以上月経がない)までの期間(time to menopause, TTM)は、AMH減少速度が最も大きな因子であり、同じAMH値であってもAMH減少速度の違いによってTTMに約2年の差がありました。他には、AMH低値、年齢、喫煙がTTMを短縮させる因子でした。AMHがゆっくり減少する場合、AMH 2.5 ng/mLの35~39歳の方で閉経するまで14年以上、40~44歳の方で12.8年でした。また、AMHが早く減少する場合、AMH 1.5 ng/mLの35~39歳の方で12.3年、40~44歳の方で10.3年、45~48歳の方で8.0年でした。AMH<1.0 ng/mL でAMHがゆっくり減少する場合、35~39歳の方で閉経するまで12.7年、40~44歳の方で9.5年、45~48歳の方で8.6年でした。また、AMH<1.0 ng/mL でAMHが早く減少する場合、35~39歳の方で10.1年、40~44歳の方で8.8年、45~48歳の方で8.0年でした。

解説:14年前からAMHを測定し、経過を調査した研究であり、誰もが知りたかった情報です。AMHが低くとも閉経は意外に遅いことがわかります。平均的な閉経時期は50歳ですが、閉経するまで妊娠のチャンスがずっと同じようにあるわけではありませんから、現実的な妊娠可能な時期は43歳頃までというのが、私たちの認識です。そうすると、予測閉経時期から7~8年前までが勝負の時期と考えていた方がよいかと思います。