精巣の温度 その3 | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

生殖医療に関する正しい知識を提供します。主に英語の論文をわかりやすく日本語で紹介します。

精巣(睾丸)の温度は陰嚢の温度に比例します。下記の論文は、下着の種類と活動性による陰嚢温度への影響を示したものです。

Hum Reprod 2005; 20: 1022-7
要約:座位と歩行時の各種下着着用による陰嚢温度の違いを検討しました。50名の健常男性(18~45歳、BMI 平均23.8、精巣容積平均14mL)に対して、両側の陰嚢に温度センサーを装着し1分毎に温度を計測しました。室温は20℃、全員1日の同一時刻に測定を開始し、シャツとズボンは身体にフィットした綿に統一しました。45分コースを6セット(トレッドミル歩行3km/hr or椅子に座る)x(タイト下着orルーズ下着or下着なし)行いました。多変量解析により陰嚢温度は、タイト下着(+0.3~0.5℃)>ルーズ下着(+0.5~0.6℃)>下着なし、座位(+1.6~2.6℃)>歩行、左陰嚢(+0.1~0.4℃)>右陰嚢、でした。下着の種類による温度差は歩行時に顕著であったため、歩行の際(活動時)には特に注意が必要です。

解説:精巣の熱刺激は精液所見を悪化させます2012.9.28「精巣の温度 その1」2012.9.29「精巣の温度 その2」。健常男性の陰嚢温度は、着衣、通気性、血流に依存するとされています。過去にも同様な検討はありましたが、サンプル数が10~20名と少なく、条件が必ずしも一定でありませんでしたので、本研究ほどの有意な差はみられていません。男性は、下着はゆるめで、通気性をよくし、座位を長時間とらないことが大切です。歩けば比較的すみやかに陰嚢温度は低下するので、座っての仕事の合間に少し歩いてみるとよいでしょう。航空機内でも同様で、エコノミークラス症候群の予防にもなります。