ちょっとうれしかったこと
仕事がら出張が多い。
新幹線の車内で、指定券チェックに来た乗務員に切符を渡したあと、何気なく見直した。自分の切符以外に見慣れぬ行く先の切符が混じっている。在来線の乗り換え口での光景がよみがえる。私の前に、バトンを抱えた学生さん。乗り換え口では複数の切符を同時に自動改札機に入れるのだが、慣れなくて戸惑っている。警告ブザーが鳴ってやり直し。乗り換え時間の短い私は焦っていた。私の順番になって、また、ピンポーン!”係員のいる窓口に移動してください”のメッセージ。急いで有人改札に移動してやっと通過できた。その時、切符の枚数がやけに多いな、と感じたのだが、私はホームへと急いだ。チェックした改札員も気づかなかったようだ。
その時に切符が混じってしまっていたらしい。バトン部の生徒さんらしいグループの一人。バトントワリングの大会に出かけるんだろう。慣れない改札で不安そうにしていた学生さんの姿がよみがえる。今ごろ切符がなくなってどんなにか心細い気持でいるだろうか。
乗務員を呼び止めて事情を説明する。「この便に乗車しているかどうかわからないが、探してみましょう。」との返事。同じ便に乗っていて切符がわたせるとといいが・・・と願いつつ、あとは乗務員にお任せるしかない。やがて切符の持ち主を探す車内放送が流れた。
これ以上は自分にできることがないことを気に病んでもし方がないのだが、やはり気になる。なんでも人事と思えないのが私の性分だ。
しばらくすると、「持ち主が見つかりました」と乗務員が知らせに来てくれた。
いい結果を聞くことができ、ほっとする。もはや私の手を離れ、結果はわからなくても仕方のないことであったが、わざわざ知らせに来てくれたことがまたさらに嬉しい。
心温まる思いを抱いて、長旅の車内を眠りについた。