じいちゃんの脈が止まったことが確認されてから1時間後くらい、ばあちゃんと2人でじいちゃんの口に入れ歯を入れることに挑戦した。

以前見たことのある若い日のじいちゃんの写真は、野心がありそうな尖った目つきの、なかなかカッコいい若者だった。

ところが、元日早朝、自分のベットで息を引き取ったじいちゃんは、当然入れ歯を外していて、全くの梅干し爺さんだ。

家族の前でも、なるべく入れ歯をとった顔は見せずにいたじいちゃんのことだ。梅干し顔を会葬の人たちに晒すのはイヤだろう。遺影写真とも違いすぎる!

というわけで、固まる前にじいちゃんの原状復帰作戦。
ばあちゃんが口を開け、私がなんとか入れ歯を押し込む。なかなか定位置らしき所に納めることが難しい。
ばあちゃんも、じいちゃんをいい男にするため、がんばる。

トライ数回、上下ともなんとか収まった!
おお、見慣れているじいちゃんの顔に近づいた。

次なる問題。
筋肉が弛緩したために、下顎が下がるのだ。このまま死後硬直すると、口が半開き状態になりいかにも死人顔だし入れ歯の苦労が効果半減だ。
顎下にタオルを入れて支えにしてみたけど、どうもうまくいかん。

叔父の提案で、日本手ぬぐいでしばし固定してみることにした。
顎の下を通した手ぬぐいを頭の上で結ぶ。歯痛の時みたいだ。

青の手ぬぐいを頭上で結ぶ状態は民謡でも踊りそうで、この深刻な重たい空気の中じゃなかったらかなり笑えるビジュアルになってしまった。
まあ、夜明けまでの数時間だ、じいちゃんも許してくれるだろ。

努力の甲斐あって?今日の納棺では見慣れたじいちゃんの顔のままで旅立ちの支度をした。
よかったよかった。

こんな努力も家族ならではだろな。