- あの日、僕らの命はトイレットペーパーよりも軽かった-カウラ捕虜収容所からの大脱走- ノーカット.../小泉孝太郎,大泉洋,加藤あい
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評価:★★★★☆
太平洋戦争中の1944年8月、豪州の田舎町カウラの捕虜収容所で起きた事件が題材。「カウラ事件 」を参照すると、理解が深まる。
「生きて虜囚の辱めを受けず、死して罪禍の汚名を残すなかれ」という戦陣訓が引き起こした悲劇だ。生き抜き、日本に残した妻と再開するためにプライドを捨てて捕虜生活に適応する嘉納二郎(大泉洋)と、日本が存在を認めていない捕虜になり帰国は絶対に叶わないと信じて忸怩たる思いにとらわれる朝倉憲一(小泉孝太郎)。戦地を励まし合いながら逃げた2人は、収容所で再会した時、そんな対極的な感情を抱いていた。
マージャン、野球、どぶろく。自由なレクリエーションで時間を過ごすPOW(prisoner of war)たち。嘉納は戦前に仕立屋をしていた技術を生かして所長のタキシードを作り、周囲に距離を置かれてしまう。実際は、その手当で大々的に演劇をやり、故郷を思う気持ちを慰めようという思いと、死にかけの状態から救ってくれた「鬼畜米英」の優しさに恩返しをしたいという思いからだった。だが、阿部サダヲ演じる軍曹たちは戦陣訓に殉じ、死ぬために蜂起しようと呼びかける。トイレットペーパーを使って、全員投票をするシーンで、嘉納が生きようと周りを説得する場面は、思わず涙が出る。
だが、このドラマで最も印象に残ったのは、祖父役の山崎努と孫娘の加藤あいが現在のカウラに到着する場面。GSで加藤が日本に電話をしている間、山崎がレンタカーから姿を消す。慌てて探す加藤に、GSのオーナーのおじさんが「墓地に行ったんじゃないのか」と声を掛けると、加藤は「誰の墓地?」と問い返す。その直後にオーナーの口を突く「君はここで何があったのか、知らないのか」という言葉が思い。戦争が終わって65年。戦争を体験していない世代ばかりになった今の日本に、重い、重い言葉だ。恥ずかしながら、自分もカウラ事件については知らなかった。
作品は日本テレビのスペシャルドラマ。大泉が持ち前のひょうきんさをうまく生かして、暗い捕虜生活を前向きに生き抜こうとする姿を好演している。さらに、阿部サダヲもはまり役。戦陣訓という、旧日本軍がつくった最悪の「殺人兵器」をそらんじながら実質的な、自殺行為へと巻き込んでいく狂気の姿は、見事の一言。

