今回はお店であった話として、「一発台編」をお届けしたいと思います。
古くは普通機のゲーム性を持った機種の一部の釘を曲げることにより、特定箇所への入賞後に玉の流れを変えて大量に出玉を得られるよう調整された台を一発台と呼んだ。
広い意味で一般電役を含む場合もありますが、基本的には玉がチューリップの先端に弾かれるなどして芸術的な動きを見せる台が多い。
当たりに一発飛び込めさえすれば、あとは店の定量まで出っ放し。
何と言っても一発台の魅力はこれに尽きる。
自分が初めて打った機種は確か三共の「ビッグウェーブ」だったと思う。
「スーパーコンビ」の設置も見掛けましたが、三穴クルーンが絶対に1/3ではないような気がして避けていました。
当時は完全にパチンコというものを疑ってましたね。
その点「ビッグウェーブ」はおそらく見た目通りの1/3だろうからまだ何とかなるかなと。
「ビッグウェーブⅠ」(三共)
長時間勝負するのではなく、やはり他の機種でやられた時などに一発逆転に願いを込めて打つことが多かったです。
実際それで上手くいった試しはあまりありませんが、一発でその日の勝敗をひっくり返すことが出来るというのは実に魅力的。
ただ浮いたお金で少しだけ勝負した時とか、無欲で座った時の方が何故か勝てましたよね。
今でもそうです、パチンコとは本当に不思議なものです。
時代が昭和から平成に変わった頃、地元の老舗T店では朝1時間以内に当てると定量が4,000発から8,000発になるモーニングサービスを実施していました。
当時は2.5円交換でしたから一撃20,000円、学生だった自分の身にはかなりの大金。
当然、餌に釣られて行っちゃう訳です。
対象機種は三共の「ハッピーバード」でした。
「ハッピーバード」(三共)
一応開店前に並んでいないと台が取れませんでしたから、普段からアツイ状況なのは間違いないでしょう。
黙って一万円までは勝負するつもりです。
さすがに厳しい調整がされていると思われ、5千円くらいでは当たる気配すらありません。
しかしここで事件が発生。
盤面中程で玉が引っ掛かりブドウが出来たのです。
隣のおっちゃんが「黙って打っちゃえ」なんて言うもんだから、そのまま打っているとみるみる玉が積み上がっていく。
とてつもなく悪いことをしている気がして心臓のドキドキが止まりません。
やがて入賞口へと玉が到達しました。
問題はここからです。
ダブルの出玉を獲得するには店員を呼んで札を差してもらわなければなりません。
しかし盤面を埋め尽くした玉は台を突いたくらいではびくともせず、最早当たってから積み上がったとは言えない状況になっていたのです。
やって来た店員は「あーあ」と言って台を開けると、積み上がった玉を取り除き「ダメ!」とだけ言って入賞口を閉じて去っていった。
大当たりを認めて貰えなかったのは仕方がないとして、当時は何かしらのお咎めがあってもおかしくない時代。
6,000円ぐらい使ったところで逃げるようにして退店しました。
やはり欲をかいてはロクなことがない。
当時打った一発台
【名称(メーカー)登場年】
スーパーコンビ(三共)1986年
ビッグウェーブⅠ(三共)1988年
タンブラーA(京楽)1988年
ハッピーバード(三共)1989年
ターゲットⅠ(三共)1989年
メガトロン(藤商事)1989年
ベータ(ニューギン)1989年
フェアリー(京楽)1990年
ジャスティ(西陣)1990年
アニバーサリーⅠ(大一商会)1991年
サーカス(平和)1992年
1990年を境に一発台は衰退の一途をたどり、「サーカス」が最後の一発台などと言われていましたが、個人的には一般電役の「アニバーサリー」の方がかなり後まで残っていたような気がします。
大当たり中は「フルーツパンチ」でお馴染みのロシア民曲「コロブチカ」のメロディーがループするのが心地良かった。
1993年の「ダ●ビー物語事件」以降は釘の概ね垂直問題が更に厳しくなり、今までの様に一発の入賞で大量の出玉を得る仕組みを作り出すのが実質不可能になりました。
これまで一発台というジャンルではあまり奮わなかった平和の機種が最後になって登場したかと思えば、お家芸のデジパチによって自ら旧要件の歴史に止めを刺す事になるとは何とも皮肉な結果であります。
仕様的にはもう復活できないと思われた一発台でしたが、2016年に役物に飛び込んだだけでアツくなれる仕様の「天下一閃」(大一商会)が登場します。
「天下一閃」(大一商会)
短期間だったとはいえ、業界を大いに盛り上げてくれました。
全国的に一回交換か低交換率で運用できれば、もう少し上手くいったのではと思えてとても残念です。
これは自分の持論ですが、玉の動きに一喜一憂してこそパチンコ。
例え一発台の復権が叶わないとしても、この先どんなに時代が変化しようともこれだけは失われてはならないと思っています。