「つくりびと展・九 -あゆむ-」ご来場いただきありがとうございました。 | 三重中勢の旬便り・・第二章・・ (津の表具師がお届けするARTなお話)

三重中勢の旬便り・・第二章・・ (津の表具師がお届けするARTなお話)

三重中勢地区(津市)にて、表具師を生業としています。地元に生かされている管理人の視点が捉えた、「旬」の話題をお伝えします。 ☆コメントは内容を確認後に公開させていただきます。

4日間に渡り津市久居の「有形文化財・油正ホール」で開催された「つくりびと展・九 -あゆむ-」も無事終了。

時折雨模様の不安定な天候の中、649名の方にご来場いただきました。

ご来場、本当にありがとうございました。

今回、店主が展示したエリアは大きな醸造用精米機が前面にある第2室奥のスペース・・

このスペースは一見展示には不向きのように感じるのですが、メリハリのついた導線を創りやすいメリットもあるスペースなんです。

 

今回の店主の展示はこんな感じで・・

 

 

<掛軸2幅と対で仕上げたインスタレーション軸、額装2点と屏風を2隻出展しました>

 

展示作品を一つづつ紹介します。

 

 <「歩み寄る」榮田清峰筆>
 

本展にあたり、リクエストした本紙で「あゆむ」というテーマだけ伝え、自由にイメージして頂きました。

二つの「歩」がひとつになって、「歩みよる」。

デザイン書家のセンスを活かせるよう、柔らかい雰囲気にしてみました。

<「山頭火の句二題」原田海光筆>

 

本展にあたり、リクエストした本紙で「あゆむ」というテーマだけ伝え、自由にイメージして頂きました。

二つの句を一幅の軸に納めることで四季のあるこの国の自然と共に生きることの素晴らしさを感じていただければと思います。

 

展示にはお二人の書家も観にきて頂き・・

 

 
<それぞれの軸の前で素敵な笑顔を♪>


また、今回は醸造用精米機の存在感を活かしてこんな展示も試みました。

 

<「いろは歌」「とりなく歌」光永絢香筆>

 

昨年出展した作品と同じ時に書いて頂いた二枚の細長い書を総裏部分にもあしらいと同じ和紙を使って、インスタレーション的にぶら下げてみました。

風に揺れてゆらゆらと舞う美しいかな文字は予想以上の好反響で、創り方を訊ねられることが多かったです。

会期中にはこの字を揮毫していただいた光永絢香先生も何度か来て頂いて・・

 

 
<3人の女性書家がタイミングよく揃ってご覧いただきました。>

 

その他、額装では・・

 

<「春夏秋冬」原田海光筆>

 

「四海生春風」(新年を迎え春風が四海に吹きわたる)

「夏雲多奇峯」(夏雲が種々変わった峯の形をなして湧く)

「鶴声秋更高」(鶴が九天になく声と共に秋天は更に高く澄む)

「冬来幽興長」(冬になって物静かな興趣はつきない)

小さな額から広がる季節感。

 

 
<「刹那」松尾和男作>

 

他の方の作品をいかすのが表具師の仕事・・。 

ですが、せっかくの機会に一枚くらいは自作の絵も観ていただければと・・。

額縁も手づくりで表装用金欄と着物裂であしらって、モデルの持つ神秘性を表しました。
会場にはモデルのSackyさんも来て頂き、お客様にも好評でした。

<「山頭火の句二題」光永絢香筆>

 

屏風の仕組みが分かりやすいように紙蝶番仕立てのミニ屏風を創ってみました。
上下を変えても楽しめるようにとの書家の遊び心で二つの歌を組み合わせて・・
上張りを施していない下地と合わせて手にとってお楽しみ頂く方が多かったです。

 

<「玉響(たまゆら)」創作屏風>

 

本紙を活かすのが表具師の仕事ですが、つくりびと展では本紙のない作品も観て頂きたい・・ということで、時代物の着物裂をパッチワーク風にあしらい、周りの紙は伝統からかみの雲母押しのものを使用してみました。
お客様からは色合わせやデザインの工夫などでの質問も多く、素敵とのお言葉もたくさんいただきました。

その他、この展覧会ならではのテーマ展示作品というのもあって・・

 

<平松典子画・浮かし額装>

 

この展覧会に仲間として出展してもらった佐野氏のお店で偶々出会った作者のお母さまよりいただいた鉛筆書きの栞を小さな額装にしてみました。
背景の菖蒲の柄は伝統からかみ、周りに張ってある裂は手織り松阪木綿を裏打ちして張りこんであります。

展示を観て頂いたお客様からはたくさんの温かいお言葉を頂戴し、他の出展者の作品からはたくさんの刺激を受けて、店主にとっても大変な励みとなる四日間を過ごさせていただきました。

ご来場、まことにありがとうございました。
来年度も開催予定ですので、その節も是非ご来場賜りますようよろしくお願いします。