去年の「大阪国際室内楽コンクール」のお話です。今回は長文です。
第一次予選終了後、第二次予選に進んだ7組の演奏順の抽選が行われ、
私の譜めくり担当は一次予選とは違うグループになりました。
・5組目 Trio Rafale トリオ・ラファール(スイス) ※名前の表記はコンクールプログラムによる
シューマン:ピアノ三重奏曲 第1番 ニ短調 Op.63
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調(1914)
・7組目 Trio Adorno トリオ・アドルノ(ドイツ)
メンデルスゾーン:ピアノ三重奏曲 第2番 ハ短調 Op.66
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調 (1914)
第一次予選で演奏された古典派の作品(ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン)は
楽譜に書かれている音型が単純なので譜めくりは比較的楽な方だったのですが、
第二次予選で演奏されるロマン派(シューマン、ブラームス、メンデルスゾーンなど)、
近現代の印象派(ラヴェル、ドビュッシーなど)の作品は、
音符の数が多い上に音型が複雑で、譜めくりの難易度が格段に上ります。
第一次予選の時よりも集中する必要があり、緊張の度合いも増します
さて、中1日おいて、第二次予選が始まりました。
リハーサルでは第一次予選の時と同じように、ピアニストと譜めくりについて打ち合わせ。
シューマン1番にはリピートがありますが、ラヴェル、メンデルスゾーン2番はリピートなし。
ひたすら前へ前へと進んでいくので、めくるタイミングの確認だけで簡単に打ち合わせは終了。
トリオ・ラファールの本番。
譜めくりをしていて鳥肌が立ちました・・・。
第二次予選でこんなに完成度の高い演奏を聴くことになるとは・・・。
譜めくり者の位置では、ピアノ、ヴァイオリン、チェロのそれぞれの音がアンバランスに
聴こえることが多いのですが、それでもレベルの違いは分かります。
これは客席で聴きたかったです。
このグループ、後から優勝候補だと知って納得
You Tube で演奏を探したのですが、残念ながら見つかりませんでした・・・。
15分ほど休憩をしてトリオ・アドルノのリハーサルに立会い。
トリオ・アドルノもラヴェルを演奏することになっていたのですが、
直前に同じ曲の譜めくりをして、難しい部分を把握できたので少し気が楽に。
(このリハーサルの最中、ステージではトリオ・アタナソフがこれまたラヴェルを演奏していました。
審査員、聴衆にとってはラヴェル三連発[E:sign01])
1曲目のメンデルスゾーンは展開が速く、頻繁にページをめくっていくことになるので、
バックステージに移動後は気を引き締め直して再度ステージへ。
トリオ・アドルノの本番。
You Tube にライブストリーミング放送の録画がありました!
ラヴェル:ピアノ三重奏曲 イ短調(1914)
第1楽章「モデレ」
第2楽章「パントゥム」
第3楽章「パッサカイユ」
第4楽章「フィナーレ・アニメ」
こちらも快演[E:sign01]同じ曲でも違うアプローチで聴かせてくれました。
1曲目のメンデルスゾーン2番は、もう私好みの演奏で、終楽章では涙が出てきて
楽譜が見づらくなって困りました。
個人的にはメンデルスゾーン2番もYou Tube にUpしてほしいです。
メンデルスゾーンは1番が有名なのですが、この演奏を聴いて2番の方がお気に入りに
なってしまいました。
こちらも客席で聴きたかった・・・
とにもかくにも、この日も無事、譜めくりが終わりました・・・。
バックステージに戻ったら、ピアニストに「あなたはとてもいい Page Turnerだ!」と
言われました。
お世辞にしても嬉しいですね。ヨーロッパの人は、相手のことをよく誉めてくれます
私も彼らに、素晴らしい演奏だったこと、一緒に仕事できて良かったことを伝えました。
ヴァイオリニストとも握手。
トリオ・アドルノが第二次予選最終組だったので、ホールでそのまま審査結果の発表を
聞こうかと思ったのですが、夜も遅いし、次の日はコンクール関連のイベントでも
譜めくりをすることになっていたので、帰ることにしました。
もう第一次予選とは比べものにならないぐらいヘトヘトに疲れてしまいましたが、
ものすごいレベルの高い演奏が聴けて心地よい気分で家路につきました。
審査結果は・・・
本選に残るのは3組のはずでしたが、
私が担当したトリオ・ラファールとトリオ・アドルノ、同じくラヴェルを演奏したトリオ・アタナソフ(フランス)、唯一ピアノ四重奏で残っていたノトス・カルテット(ドイツ)の
4組が本選へ進むことになりました。
他のグループの演奏も相当良かったらしいので、聴きたかった・・・。
次は、本選までの間に行われた「審査員長と出場団体によるトーク&コンサート」
について書く予定です。