木も見て、森も見たい 〜リーマン幾何学だけではなく、ユークリッドもヒルベルトも見たい〜 | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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数学復活シリーズと題して(いつ題したかは別として)、3月の寺子屋は数学の風景とリーマン幾何学を学びました!

数学が「数が苦」になっているのは、きっと「教育のせいにちがいない」と、人のせいにして(社会のせいにして)、我々は別な学び方を模索しましょう(笑)

ただ実際にファインマンやらチャイティンから学ぶと物理学にせよ、数学にせよ風景が一変します。こんなことだったの?とあっけにとられるくらいシンプルで、興味深く楽しい世界が広がります。何よりも、もっと知りたいという自然な好奇心が広がります。素晴らしい体験です。

とすれば、あながち学校教育やら教師のせいにしても良いのかもしれませんw


とは言え、大人になれば(いや、子供でもそうですが)、自分の教育には自分で責任を持つべきです。自分にふさわしくない教師だと思えば、チェンジすればいいことです。注文すれば翌日には世界の一流の教師がご自宅に届きます。ソクラテスもプラトンも日本語で語りかけてくれます。良い時代です。


もちろんYoutubeでも世界中の教師に出会えます(いやiTuneUでもスカイプでも)

まあ、それはさておき...


リーマン幾何学でした。

ポイントはシンプルです。

リーマン幾何学を通じて、数学に対する考え方や風景を変えましょうというものでした。


(引用開始)
文学者、物理学者、そして数学者がスコットランドを走る列車に乗っている。

天文学者は窓の外を眺め、一頭の黒い羊が牧場に立っているのを見て、「なんと奇妙な。スコットラ ンドの羊はみんな黒いのか」と言った。

すると物理学者はそれに答えて「だから君たち天文学者はいいかげんだと馬鹿にされ るんだ。正しくは『スコットランドには黒い羊が少なくとも一頭いる』だろう」と言う。

しかし最後に数学者は「だから君たち物理学者はいいかげんだと馬鹿にされるんだ。 正しくは『スコットランドに少なくとも一頭、少なくとも片側が黒く見える羊がいる』 だ」と言った。

(Wikipedia 数学的なジョーク)
(引用終了)

何度か紹介しているジョークですが、これは3者の立場をくっきりと表しています。

天文学者の牧歌的で一を聞いて十を知ってしまう感覚、もう少し厳密な物理学者たちの臨場感、そして超厳密な愛すべき数学者の世界観が手に取るように分かります。

彼らは同じものを見ているのですが、その世界観が異なるために、結果的にちがうものを見ています。
これはアインシュタインがハイゼンベルクに言ったことを思い出します。

理論があってから、観測が成立するのです。その逆ではないのです。3者の心象風景を覗いてみれば分かります。天文学者の頭にはスコットランド中のすべての羊は真っ黒です。物理学者の頭の中には白い羊もいれば、黒い羊も(少なくとも一頭は)いるスコットランドの風景が広がっています。そして数学者は...、いわば見たままとも言えますが、もしかしたら反対側が白いかもしれない、黒く見えるだけで、本当は光の具合だけなのかもしれない羊が一頭しかいないかもしれないスコットランドの風景が広がっています。荒涼たる様です(笑)

これがそれぞれの理論なり世界観なり文化を背景として、観測の結果です。
同じもの(とされている)ものを見ても、これほど異なります。

この感触はきわめて重要です。


幾何学とはGeometryと言います。

「学問に王道なし」とは本来は「幾何学に王道なし」であったと言われています。学問とは幾何学のことであったのです。ユークリッド幾何学が記されているユークリッド原論は数学だけではなく、哲学や科学の規範となりました。ホッブズにせよ、パスカルにせよ、ニュートンにせよ、ロールモデルはユークリッド原論にありました。

ヒルベルトはユークリッド原論をもとにして、ユークリッド幾何学の点や線などの物理世界との接点をなくすことで、純粋なユークリッド原論を取り出したいと考えました。すなわち、数学の公理化です。

もちろん学校教育の数学は全世界的に長年ユークリッド原論でした。

しかし幾何学とは幾何とは何でしょう。幾何とは「いくばくぞ?」という漢文ですが、これは測量ということです。測るということです。距離を測ります。

またGeometryとは、Wikipediaによれば古代ギリシャ語で土地の測量という意味です。

術語「幾何」の原義は土地測量(「古典ギリシア語: "γη"(ゲー):土地」および「"μετρεω"(メトレオ):測定」)である。英語: "geometry" は 古典ギリシア語: "γημετρεω" の翻訳("geo":土地、"metry":測量)であり、接頭辞 "geo-" の音写として「幾何」(jǐhé; チーホー)が中国で考案された。日本語の「幾何」はこれの輸入であり、日本式に「きか」と読まれる。似たような例に「関数」がある。Wikipedia「幾何学」

Geoは土地であり、地球のことです。
接頭辞のgeo-は「地球の、地面の、大地の、土の、地理の、地理学の、土地の」という意味です(Wiktionary)。

とすると、たとえば裏の畑を測量したいというときは、地球が球体であることによる曲率など無視できますので、たかだかxy平面のフラットな硬いユークリッド平面と近似できます。

そこで広がるのがユークリッド幾何学であり、ユークリッド空間です。畑の上に小屋を建てるとすれば、縦と横だけで記述できる二次元の畑から、縦と横と高さのある三次元空間を考えることになります。2が3になるだけです。パラメータが1つ増えるだけです。



その抽象度を上げれば、設計図やら模型になり、



もうちょっと抽象度をあげて、パラメータ(座標)だけにすると、見慣れたxyz座標になります。




数学とはただの言語の1つであり、世界の見方の1つです。

どの見方を選択するかは、我々の自由です。

黒い羊を見た時に、天文学者のように考えても、数学者のように考えても良いのです。


地球(土地)の測量として考えたときに、裏庭であればユークリッド幾何学が広がりますが、地球サイズで考えるとリーマン幾何学が見えてきます。



地球は面で包まれていますが、面は面でも平面ではなく球面です。

ただ我々が足元を見て地球を感じても、あまりに大きすぎてその球体さが分かりません(^^)

ですので、サイズを一気に縮小します。

手のひらサイズにしましょう。



手のひらサイズにした上で、座標を考えます。デカルト平面(xy座標)にあたるのが、地球の場合は緯度経度です。緯線と経線が直行して座標表示しています。



ということは、緯線同士も経線同士も定義上はすべて平行線となります。

しかし、緯線はともかくとして、経線はすべて交わります。平行な直線がすべて交わるというユークリッド先生も真っ青な現象が起きるのです。



北極と南極がそれぞれ平行な緯線が交わる特異点となっている様が分かります。

裏の畑で考えれば、平行な直線は交わることがありませんでしたが、地球サイズで裏の畑を考えると平行線はばんばん交わります。

北極から赤道に向かって、経度0度と東経90度に線を引き、緯度0度、東経90度、そして赤道で囲まれた三角形を考えると、北極点の角度は90度、赤道と緯度は直行しているのでそれぞれ90度。すなわちこの巨大な三角形は90度×3=270度となります。

内角の和が180度というのは嘘だったということです。

ちなみに地球のような球面上に線を引いてもそれはユークリッド空間でイメージするような真っ直ぐな線にはなりません。球面に沿います。ですので、2点を結ぶ最短距離を直線と考えるように、2点を結ぶ最短距離を測地線と定義します。ユークリッド空間での測地線は直線です。球面での測地線は大円と言います。

ちなみに経線はすべて大円です。大円というのは大きな円のことです。
球をスパッと切ると円が現れますが、もっとも大きな切り口があらわれるのは中心を通過したときです。もっとも大きな円が切り口としてあらわれるので大円です。

面白いことに球面上では2点間の最短距離はいつも大円という測地線を通過します。

平面では測地線は直線です。2次元空間でも3次元空間でもユークリッド空間であれば測地線は直線です。2点を結ぶ最短距離が測地線なので直線になるのは当然ですが、逆に言えば測地線とは直線のアップデート版と思えば臨場感が上がります。

東京とNYを結ぶ最短距離はメルカトル図法上の直線ではなく、東京とNYを通る大円の上にあるということです。そこが測地線です。

幾何学というのが土地の測量であり、地球の測量であると考えると、裏庭の測量であれば地球は平面と考えて問題なく、ユークリッド幾何学となりますし、地球を手のひらサイズにおさめれば空間の曲率を考えたリーマン幾何学になります。

リーマン幾何学は非ユークリッド幾何学とも言い、一見するとユークリッド幾何学のアンチのようでですが、リーマン幾何学はユークリッド幾何学を包摂します。
曲率が0のリーマン空間がユークリッド空間です。曲率が正であれば地球型ですし、曲率が負ならば谷の中の村の測量となります。

地球の測量ということで言えば、平らな畑も、谷底も、おわん型の山(でも地球でも)同じということです。
平らな畑の測量だけが2000年以上もユークリッド幾何学として注目されてきましたが、曲率のある面(空間)も考える時期に人類は来たということです。

ここから始めると、質量は時空の曲率を増させるという考え方もより直感的になります。
SyntaxとSemanticsを往復しながら、自分なりの地図を脳の中に創りあげましょう!