主観と客観はどれほどずれるのか?Y字バランスとI字で考える嘘をつく自意識について。 | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

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主観と客観はどれほどずれるのか?と言っても、別に哲学の議論をしたいわけではありません。間主観性だとか、客観は存在しないなどということは今はどうでも良く、主観・客観という言葉を「日が昇る・沈む」と同じように日常的な文脈で考えます。

何が言いたいのかと言うと、すでに十分に柔らかいバレエ少女たちがY字までは上がるけど、I字にならないと言って個人セッションに来られることがあります。

手を使っても良いので十分にY字程度まで足が上がる場合は、I字にするのはそれほど難しくありません。

ヒーラー視点で言えば、Y字まで上がっている子をI字にするのは情報操作とそれを軽くサポートする手技だけで十分に可能です。
ただ例えば90度までも足が上がりませんというような大人の男性などは、問題が物理レベルなので少し時間がかかります。ここで言う物理というのは、情報に対置する概念ではなく、抽象度の濃度のような感覚で捉えて下さい。物理抽象度に近いと書き換えが比較的に困難なのは、物理抽象度のほうが臨場感が高いためです。
分かりやすく言えば、足が上がらないように徹底的に訓練してきた人にその訓練の成果を取り除くのが大変というイメージです。一種の身体版の脱洗脳です。身体の脱洗脳はかなり厄介です。

Y字レベルまで足が上がっているのであれば、その厄介さが無いのでヒーラー(気功整体師)としては比較的に楽に上がります。「まといのば」に限って言えば、気功整体師だけでなく、スクール生や身体デザインコーチ達にとっても同様でしょう。
かつての「はじめての気功」講座でも何度か実習しました(このときの実習は、アイソメトリック的な気功ストレッチではなく、内部表現書き換えを用いた一瞬で硬い身体をY字やI字に変えるというワークを行いました)。

カラクリ的にはご承知のように、Y字やI字のポイントは股関節の極端な柔軟性、もしくは股関節の二重関節(ダブルソケット・亜脱臼)という都市伝説でもなく、腰椎と骨盤、そして股関節を連続的に使うこと、そしてそれに肋骨や肩関節、頚椎などを調和させていくだけのことです(「だけのこと」というのは簡単だということではなく、オカルト的な二重関節という説明ではなく解剖学的にも普通の現象でしかないという意味です)。

以前はこの解剖学的なカラクリを説明するのが一苦労でした。僕の説明が稚拙だったのでしょう。
いまはきちんとブログや関連書籍で学んでから来られる方が多いので、説明がシンプルで済み、時間がセーブできるのでお互いにとって幸いです。


で、本題です。

自分の中にあるY字なりI字のイメージと自分の身体で実現するY字・I字はずいぶんと異なります。

我々は意識で「身体のイメージ」を描いて、それに沿わせる形で身体を操作します。
ですので、そのマップたる身体のイメージが間違っていると、ヒンズーのバリを歩くのにエッフェル塔のあるパリの地図を持つようなもので、目的地には永遠に辿りつけません。GIGOです。間違った指示書を入れても、出力はいつもゴミだけです。

僕等はその地図をどう書き換えるかと言うとシンプルです。

まずは気功を使って書き換えます。これは内部表現書き換えの手法を使います。
例えば解剖学の説明をしているときなどに、同時並行で猛烈にクライアントの脳内に書き込みます。

その上で、I字なりY字の状態をクライアントさんの身体に実現します。実現するというのは手技を用いて骨格を正すことで実現するということです。これは気功整体の手法を用います。無理矢理に骨格を動かすというものではなく、いつのまにかそこへ足があるという感じで、Y字やI字を実現します。

その次がポイントです。

身体に実現して、それをすぐに自分のものにできるのは北島マヤのような天才だけです。
ほとんどの人は猛烈な違和感を感じます。これは正常な反応です。なぜなら自分が抱いていた身体のマップと異なるからです。その身体のマップが間違っているのですよと説得しても無駄です。ホメオスタシスは猛烈に反発するだけです。

そこで、I字やY字の写真を取ります。鏡で見せてもいいのですが、ベジャールの言葉ではないですが鏡は嘘つきなのです。デジタルデータのほうが信頼に足ります。繰り返し見れますし、冷静にチェックできます。鏡を見るときは人は変性意識状態に入っています(だから三種の神器なのですが)

ここで主観と客観のずれが顕在化します。

写真に写っている自分のY字なりI字は紛れも無く客観的に見たきちんとしたY字やI字であることは認識できます。しかし主観的に自分の身体を内側から観ると「違う」という感触をぬぐえません。

主観と客観は相当にずれているということが第一の驚きです。第二の驚きはこれほどのズレがあってもこれまで普通に日常生活をおくれていたということです(これは単純な理由です。地図が適当であっても、ざっくり合っていれば日常生活はおくれます。Y字に上がらなくても生活は可能だからです)。

主観と客観がずれたときには、当然のごとく主観が採用されます。そこに楔を打ち込むのが、デジカメ写真です。自分のY字が写った写真を見て、そのときの体感(主観)と写真(客観)を整合させる努力を脳に強制することがポイントです。この強制がうまくいけば、主観が更新されます。身体のY字・I 字に関するマップが更新されるのです。

コツを言うならば、「だらし無さ」です。

某フランス国立バレエ団のプリンシパルのクラスレッスンを見たことがあります。その際に彼が言っていることがふるっていました。彼は非常に長身の綺麗なダンサーです。怪我により惜しまれながら引退しました。彼が言ったのは「もっとlazyに踊れ」ということです。lazyです。
lazyに踊れという教師は他に見たことがありません。ただその指摘はまさに正しいと思います。

Y字やI字を実現したときに感じるのもこのlazyです。だらしない感じです。「こんな楽をして良いの?」「こんな悪い格好で良いの?」と思います。ところが鏡を見ると、自信にあふれたダンサーが足を高々と上げている姿が見えます。
主観と客観は事程左様に異なります。

思いっきりだらしなく踊ってみると新しい世界が開けるかもしれません。

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ギエムさんのバーレッスンも踊っている姿も至近距離で拝見する機会がありましたが、どれほどカラクリを熟知していて、納得していても驚くしかないパフォーマンスでした。すごいものです(ちなみにギエムさんの上げ方は通常のバレエと少しだけ異なります。それを嫌う玄人の方も少なくありません。評価はともかくその違い自体は知っておいてもより面白いと思います)。


【書籍紹介】

信頼できる研究者によるバレエ向けの教科書です。骨盤や腰椎に関してきちんと書かれています。
以前、バレエ記事を頻繁に書いていたときにはよく紹介していたように思います。

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高価な大型本ですが、ギエムファンなら必携です。肉声が素顔が垣間見れます。