いま踊っていることに夢中にならない | 気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

気功師から見たバレエとヒーリングのコツ~「まといのば」ブログ

四ツ谷にありますバレリーナ専門の気功整体「まといのば」のブログです。
気功師から見たバレエとヒーリングのコツを公開します。
「まといのば」では、バレエ・ヒーリング・美容の各種セミナーを行っております。

バレエ上達のコツは、いま踊っている踊りに夢中にならないことです。次のことをたえず想定すると上手に踊れます。

ジャンプをしているときに、そのジャンプに夢中にならず、ピルエット(回転技)をしているときにピルエットに夢中にならないことです。


たえずその先、その先を見るようにします。

ジャンプならば着地のことを考えます。その次のステップを考えます。ピルエットを回っているときはフィニッシュのポーズを考え、そして次のステップをイメージします。

ベンジャミン・リベットの画期的な研究で分かったのは、我々は無意識で行動をしているということです。
あたかも意識的に行動しているように私達が錯覚するのは、脳が過去に遡って記憶を書き換えるからです。

実は無意識で反応しており、後で意識的な行動と後付けするのです。

これは条件反射だけではありません。かなり高度な情報処理もそうです。

車を運転していて、子供が飛び出してきたとします。
そのときに、とっさにブレーキを踏むのは無意識です。意識が認識して、判断して、行動する頃には、もう子供は轢かれています。

無意識で車のブレーキを踏み、意識は後からゆっくりやってきて、書き換えられた時間軸の中で、自分が判断して自律的な行動をしたかのような顔をします。

これが脳科学の知見です。

脳科学者の池谷先生などは「科学的には人間に自由意志は存在しない」とおっしゃいます。これは認知科学や脳科学の現在の一つの結論でしょう。

条件反射ではなく、高度な情報処理を無意識はするのでしょうか?

むしろ無意識がそれをしないとなると説明がつかないことがたくさんあります。

車のブレーキだけではありません。

野球のバッティングもそうです。テニスや多くのスポーツはそうです(ゴルフなどは違うかもしれませんが)。

野球のボールがピッチャーの手を離れてから、キャッチャーミットに入るまで0.5秒(時速125km)と言われています。脳(意識)が認識し命令をしていたら、間に合いません。ピッチャーの手を離れたときに命令しても、それを筋肉が遂行するときにはもうボールはミットの中です。

ですから完全に無意識でやっています。

ただ脳(意識)は狡猾(こうかつ)なので、時間をさかのぼって記憶を修正します。ですからあたかも意識的に判断しているかのように錯覚しているだけです。

バレエもスポーツもこの無意識での高度情報処理を鍛えるのがポイントです。

無意識での思考と言うと不思議な感じがします。

知性とは意識的なものと僕らは思いたがります。
でもそれは錯覚のようです。

行動科学は人間を対象としたものは無残な失敗に終わりました。でも動物行動科学は相当に面白いです。

例えば、カエルの右足をしばって右側をくすぐります。そうすると最初は右足を動かします。でもしばられていることが分かると、左足を持ってきて掻きます。

これはかなり高度な知性です。これは判断が入るために、条件反射ではありません。

少し残酷ですが、脳を除去して同じ実験をします。
すると脊髄反射として同じ反応をするそうです。脳の介入が不要ということです。

もっと面白いのはもっとも原始的な生命である粘菌が持つ知性の研究でしょう。粘菌が迷路を解くという研究でイグノーベル賞を受賞しました。イグノーベル賞と言うとトンデモ理論のようですが、ちゃんとした学術誌に発表されています。粘菌ですら迷路は解けるということです。
これは相当に面白いです。生命や知性に対して新しい知見が開けると思います(シンプルに言えば、知性や論理はもっとヒューリスティックなものということです。我々は知性や論理を完全情報の側から考えすぎています。もっと泥縄式なのが最も合理的であり、最適解ではなく近似解を求めるのが生命であり、宇宙なのだと思います)。

人間に自由意志がないという、半ば過激な見解は、おそらく脳の働きとしてはそうとしか言えないのでしょう(僕自身は、苫米地理論ではないですが、システムSの外側に出た人は自由意志を持つと思います。瞑想で宇宙を出るということです)。

少なくとも認識は0.5秒遅れで起こります。

何かをしようと、脳が準備してから0.5秒遅れて、意識は認識します。その時、傲慢なる「意識」は自分がこの行動をしようと決めた、と妄想するのです。
残念ながら決めたのは、無意識です。無意識が準備をして、整ったころに「意識」という裸の王様が出てきて、自分が決めた顔をします。

ですから、いましていることをいま変えることは難しいのです。

ですから、踊りにおいても、少し先を見て、現在の状況をしっかり眺めながら、眺めるだけにするイメージです。
何かしようとジタバタしないことです。

それより先のステップ、先のアンシェヌマンをイメージします。するとうまくいきます。脳が準備する前にゴールを示せるのです。ビジョンを提示できるので、脳はそれをリアリティだと思って遂行します。

端的に言えば、ありとあらゆる瞬間に見るのはゴールだけということでしょう。


*今回の議論も本来なら大量の注をつけるべきでしょうが、今回も参考文献を示すだけにしておきます。


粘菌 その驚くべき知性 (PHPサイエンス・ワールド新書)/中垣 俊之

¥840
Amazon.co.jp

進化しすぎた脳 (ブルーバックス)/池谷 裕二

¥1,050
Amazon.co.jp

単純な脳、複雑な「私」/池谷裕二

¥1,785
Amazon.co.jp

記憶力を強くする (ブルーバックス)/池谷 裕二

¥1,029
Amazon.co.jp

海馬―脳は疲れない (新潮文庫)/池谷 裕二

¥620
Amazon.co.jp

和解する脳/池谷 裕二

¥1,470
Amazon.co.jp

マインド・タイム 脳と意識の時間/ベンジャミン・リベット

¥2,835
Amazon.co.jp

宇宙をプログラムする宇宙―いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?/セス・ロイド

¥2,310
Amazon.co.jp

ドクター苫米地の新・福音書――禁断の自己改造プログラム/苫米地 英人

¥1,470
Amazon.co.jp