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Hanakoの怪談ブログ

身近な怪談話を集めました。

だんだんとI子の息が整い、落ち着いてきたので、一体何が起こったのか聞いてみた。

以下は展示会場から、カフェにたどり着くまでに、I子が実際に体験した話。

 

私と展示会場に着いたI子。いつも通り私が半分ぐらい見終えたあたりで待っているだろうと、彼女のペースでゆっくりと展示物を見て回った。そしてこれもいつも通り、ちょうど真ん中あたりで私と合流し、ベンチに腰を下ろした。

今回の展示物は彼女好みのものが多かったので、上機嫌で私に展示物の逸話を披露する。

 

ここまでは、すべていつも通りだ。

 

最初にI子が違和感を持ったのは、影だった。

展示会場なので、展示品が置かれているショーケース以外の場所は、当然薄暗い。違和感があるのは、その濃さだ。

一か所、会場の角に当たる部分の影が、やけに濃い。そこだけが、黒いのだ。

(何かおいてあるのかしら)と思って、目を凝らしてみても、よくわからない。

(気のせいかな)と思い直し、再び私との会話に戻ろうとした時、影が動いた。いや、動いた気がした。

(まさか、ね)そう思おうとするが、その角にわだかまる影から、目が離せない。

見たくないのに、目をそらせずにいると、今度ははっきりと影が動いた。まるで小さな波をうつように、その黒い影は小さく動き始めた。うつ波がどんどん高くなる。そうしているうちに、それは人の形を取り始めた。

(あかん、これ以上は、見たらあかん!)と強く思うのに、目が離せない。

もはや、ただの影ではなくなったそれは、完全に人の形になりつつあった。頭部と思わしき部分の、ちょうど目のあたりに、黄色い線が見え始める。

(これと目があったら、ほんまにあかん!)と強く思った時、ようやくそれから目をそらすことができた。

とにかくここから出なければ。

 

そこからは、とにかく無我夢中で走った。影のないところ、明るいところを探して、文字通り走り回った。

視界に影が入ると、怖くてたまらない。

実際、デパートの外に出た時、近くの建物の影が、波打った気がした。

気のせいかもしれない。でも立ち止まって影を見てしまえば、今度は確実に、あれと目が合ってしまう。そこには妙な確信があった。

目が合ったら終わり。

とにかく明るいところへ。

それだけを考えながら、よく知ったこの街で、明るい場所はどこか、必死に思い出そうとした。

 

そして思い出したのが、件のカフェだ。地下街の中でもひと際明るいエリアの、ひと際明るいカフェ。

 

そこを目指して走り、地下街へ駆け降り、見つけた時は、(はぁ、これで助かった!)と思ったそうだ。

 

この話を聞いて、私は自分に霊感がないことに心底感謝し、二度とあのデパートの催物会場には行くまいと心に誓った。

そしてそれ以後、彼女と美術館に行くときは、もう半分のところで待つのをやめ、最後まで見終えて、ロビーのなるべく明るいところで待つようにしている。二度と町中を何も聞かされず走り続けるのは御免だし、散々走らされた後に、怖い体験談を聞かされるのもこりごりだからだ。