夏休み最終研修2本目は,6年生の「場合の数」の活用問題です。順列も組み合わせも学習し,いくつかの活用問題をした後の時間です。5人班で3つの係を決める場合を考えます。3つの係はそれぞれ違いますので,問題の構造自体は「順列」です。それさえ分かれば特にひねりのない普通の問題です。しかし,私が見ていたすぐ前にいた2人の子どもはどちらも「10通り」と答えています。この問題を「組み合わせ」ととらえてしまっています。その原因として,前時が「組み合わせ」の問題だったことが大きいようです。2人とも「5人から係をしない2人を考える」という見方をしていましたし,一方の児童は中学で習う「コンビネーション」の記号などを使って計算していることから,低位な児童ではないことは一目瞭然です。それでもこんなことが起こってしまうのです。
全体での話し合いになりました。最初に「自信度」の話になり,五分五分のような話になりました。一人の児童にやり方を板書してもらいました。そうすると「樹形図」を描き始めました。
するとそれを見ていた私の前の2人が,自分のノートを消し始めました。そして式などを考えながら,正解の「60通り」に直していったのです。
出来上がった樹形図を見ながら,一番前が「リーダー」4つに分かれて「風呂係」さらに3つに分かれていった先が「食事係」だという話になり,これと同じものがリーダー5人分あるので「12×5」で60通りになるという結論になりました。
ここから第2問に変わります。今度は食事係が大変だったという話から,「食事係2名」に変わりました。この場合にどうなるのかということで,すぐに自力解決に入りました。子どもたちの結論としては「120通り」と「60通り」に分かれていたようです。後の研究会で授業者が話されていたことの中に「樹形図をかく児童がほとんどいなかった」ということがありました。私の前の児童もそうでした。その結果「式で解決」しようとする児童がほとんどになったようです。
話し合いになりました。最初の児童は,
「120通りとした人は,5×4×3×2としたと思うけど,風呂係2人には順番がないから,4×3は÷2をしなくちゃいけない。」
という話になりました。確かにその通りなのですが,これだけで全体に伝わったとは思えません。順番がないことに関しては,簡単に樹形図なども出てきて説明するのですが,なかなか難しいようです。さらにそのあと予想外の考えが出てきました。それは,
「最初の問題でも,役割をやらない余り2人がいる。余りを2人でやる役割と考えると,今度は風呂係が2人になっただけになっている。余りと風呂が変わっただけなので同じ60通りになる。」
というものでした。素晴らしい考え方です。こんなとらえ方ができるのは式だけてやるよりはるかに価値があります。「目で見てわかることは計算などしない」という素敵な数学です。
しかし,このアイデアは「発想の転換」の話であり,ここまでの流れとは全く違うことを話し合っているので,ついていけない児童もたくさんいたのではないかと思います。
後の研究会で,私も指摘し,パネラーからも出てきていたのは,2問目でも「樹形図」が出てきて,1問目と比較できるようにしなければならないこと。間違っている120通りの樹形図も示し,そこからかぶっているものを消していく活用も必要なのではないかということです。後者のためには樹形図をシンプルにするため「リーダー,食事係,風呂係の順に問題に示したほうがよい。真ん中に消去するものが出てくると分かりにくい」ということも提案させてもらいました。
授業者いわく,樹形図を取り上げなかったのは,子どもたちが必要性を感じておらず,やっている児童が少なかったから,と説明されました。それに対してパネラーから,
「子どもがやってなくても,先生の方から投げかければよいのではないか。」
という意見も言われましたが,授業者は子どもたちの意識を大切にしたいため,樹形図を押し付けることには納得できていないようでした。私はどちらかと言えばパネラーの方の意見に賛成です。ここは意図的に樹形図に向かわせたい場面です。そこで時間もなくなってきたところで最後に私は言わせていただきました。
「私の目の前にいた2人は,最初の問題で10通りにしていました。その児童が樹形図が書かれ始めたところで60通りに変えていきました。その場面で順列の問題だと気付いたようです。だからその2人に,どうして10だったのを60に変えたの?と尋ね,樹形図を見て気付いたということを引き出し,樹形図って自分で考えるときやみんなに伝えるときには便利なんだね,とクラス全体に樹形図のよさを広げたうえで,じゃあ樹形図を使って次の問題をやってみよう,というのは決して先生の押しつけにはなっていないと思います。」
この方の授業は,公立時代も含めてもう何度も見させていただいています。いつもしっかりと「数学」が根付いた教材開発をされていて勉強になります。今回もありがとうございました。