「小数のかけ算」の単元に入ります。第1時は「×小数」の導入で,算数教育の世界でいう「かけ算の意味拡張」の場面です。私は,小学校3大難関教材と呼んでいます。
 左のような文章題で導入です。板書・視写の後自力解決に入りましたが,この反応でこれまでの学習状況がある程度見えてきます。自力解決できない児童が圧倒的に多いのです。その中で「24×6」という,出てきた数字をそのまま当てはめる,というのがその典型です。そのような学習場面しか経験がないのでしょう。イメージすることをストップさせています。
 もちろん「24×3」と倍関係のイメージがもてている児童も数人います。逆に「24÷2」をして1mの重さを求めてから考える児童が,たった1名しかいませんでした。これも大きな問題と言えます。
 この2つの考えを発表させますが,「3」の意味を全体に広げていくのにもかなりの時間が必要でした。一方,式が示されると1mの重さを求める方法(帰一法)の意味は比較的よく伝わったようです。どちらの方法でも答えは「72g」になりました。
 次に数字を「4mで48gの針金10mの重さ」に変えます。帰一法を知った子どもたちは,1mが12g(さっきと同じ)になることを利用して「12×10」で求めています。一方,倍関係でみる児童も「2.5倍」になることを見つけ「48×2.5」とすんなりと立式している児童もかなりいます。ここは揺さぶりをかけなければいけません。
 「48×2.5」の場合,線分図を使うと「48+48+24」というたし算になり,同数累加とは言えなくなります。このことに「違和感」をもつ児童と「まあいいんじゃない。」という児童に分かれます。これが大切で,形式だけ見ると似ているので「まあいいか。」と考えるのも真。同数累加の意味にこだわって違和感をもつのも真。ここはその両方が出てくれば成功です。
 さらに「3mで36gの針金7.5mの重さ」になると,帰一法を使っても,最後は同数累加にならない「違和感」になります。そうすると,この立式を認めなければかなり難しい式になってしまいます。そこで,
「じゃあ仕方ない。まあいいことにするか。」
というのが,数学の「約束」の作られ方です。
 ただしこのことを,単純に認めるだけでは安易です。この日,考えてきた針金の長さと重さを表にまとめていきます。整数値で示された結果を眺めると「比例関係」になっていることが分かります。その表の中に「7.5mで90g」という結果を組み入れます。一瞬違和感もありますが,これまでの比例の約束である「2倍,3倍…になるともう一方も2倍,3倍…になる」という約束が,小数倍でも成り立っています。だから表の中に入れ込んでも性質が変わらないことを押さえ,かけ算の立式を認める約束をします。
 これまでの「×整数」の性質と,今回の「×小数」の考え方が,今までの約束のルールを守りながら新しく組み入れています。このように考えを進めていくことを「拡張」と言い,拡張の結果今までのものを包摂しながら1つにすることを「統合」と言います。
 日本の算数教育が挑戦してきた本質の流れを大切にいながら。わたしなりに進めている授業構想です。

 

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