この春休みに,日本数学教育学会(日数教)の学会誌が送られてきました。いつものことなので何気なくぺらぺらとめくっていて,訃報が目に飛び込んできました。今年の1月に,この会の会長をされていた「杉山吉茂」先生がご逝去されたという内容でした。享年90歳だったようです。
杉山先生は,日本を代表する「数学教育学者」で,私のようなものが先生のことを紹介する必要もないほどの方です。追悼文には,先生の功績がたくさん述べられていましたが,わたしにとってはその中にない,2つのことが心に刻まれています。
1つ目は,千葉で行われたKD研の全国大会で,4年生の「変わり方」単元で,「周りが赤い階段」の授業実践を発表した時のことです。辛口が有名な杉山先生が,私の発表に対して,
「変わり方なんていうのは,日常の学習の中でできるので,特別なことをする必要はありません。そう思って聞いていたのですが,この発表だけは違っていました。」
と,べた褒めしてくださったのです。私の授業は,1段1段の場面がそれぞれ問題解決になっている,というのがその理由だったのです。
その後,富山でのKD研で,飛び込み授業をした時も講師をしてくださりました。その時はかなり厳しいご指導をいただきました。
2つ目は,著書との出会いです。このブログのテーマの一つに「懐かしの研究授業・一冊」というものがあります,数学教育関係の名著を紹介するテーマなのですが,その最初に私が示したのが先生の書かれた,「初等科数学科教育学序説」という本です。「教材研究のバイブル」といってよい素晴らしい内容です。この本について,私は飲み会の席で先生に,
「あの本は本当に素晴らしいと思いました。」
と生意気にも述べたのに対し,先生は,
「あの本のよさが分かるということが大切なんですよ。」
と肩をたたいてくださいました。
そんな先生が亡くなられたというのは本当に日本の数学教育にとっては痛手です。追悼文の最後に,
「数学を用いて」身の回りの事象を解明し,問題を解決する力をつける数学教育,をすべての子どもたちに実現していくことこそが,先生から賜ったご恩に報いる道」
とありましたが,まさにその通りだと感じました。謹んでご冥福をお祈り申し上げます。