前時に「九九表」を右と下に広げました。本時はそのことを強調する「促言」を出していき,
「だったら,左や上にも広がるんじゃないか。」
という発言を引き出し,めあてとして設定しました。ただし,「広がらない。」と考えている児童もかなりいます。その理由として,右や下は,この後も無限に広がりそうですが,上と左に関しては,どんどん広がらないようなイメージがあるからです。これは仕方ないでしょう。中学校で「正負の数」を学習するまで待たなければなりません。
 まず,左に広げていきます。1つの場所を示して,そこが「5×0」の位置であることを確認します。この答えを聞いてみると「0」に交じって「5」という声も聞こえます。イメージとしては「5+0」の感じでしょうか。子どもらしい発想です。たし算とかけ算の「単位元」の違いですが,その混同を表しています。
 そこでこの演算の意味を聞いてみると「5が0個」という意見が出てきました。さらにかけ算のきまりをつかって「5×1」の5から5を引く意見も出てきました。後者は学習したばかりで分かりやすいようです。前者に関しては,具体的な,
「あめが5個入ったふくろが0袋だと,あめは何個かな。」
という,問題に落として,その言葉をイメージさせます。
 上に広がる場合も同様に進めます。今度は同数累加で説明できます。さらにあめと袋の場面にすると,何も入っていない袋が4袋あることになるので,計算結果のイメージが分かりやすくなっています。こうして,九九表が「一まわり」膨らむところまで進めることができました。
 こうして,0を含むかけ算を一般化しました。計算だけ見ると簡単なことですが,それぞれ「意味の拡張」となっているので数学的には大切な場面です。
 この後は,少し計算練習をします。0を含むかけ算の練習ですが,そのタイプばかりの出題では練習になりません。紛らわしいものもいくつか入れておき,しっかり考えながら計算しなければならないようにしています。
 この後は,前時に学習したことも含めて「的あてゲーム」の場面を使って練習していきます。教科書では,このゲームを使って,計算場面を広げていますが,これでは大人が意図的に演算を拡張しています。九九ということに対する「知的好奇心」に培って展開したのが私の流れです。大きな違いがあります。

 

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