2月下旬に,今年度最終研修として,某国立大学附属小学校の研究会に参加してきました。この学校に行くのは今年度だけで3回目です。授業は2本見られました。1本目は6年生の「ピックの定理」です。
「ピックの定理」は,6年生の特設授業として,私もいつも行っているものです。1㎝間隔で並んだドットの中に,ドットをつないで図形を作ったとき,その面積は,図形の辺上に来るドットの数と,図形の内部に来るドットの数で計算できるというものです。「私の実践はこちら」
辺上のドットを「通点」(私のクラスの児童が名付けた)
図形内部のドットを「中点」としたとき,
「面積=中点+通点×1/2-1」
となります。左の長方形であれば,中点が12個,通点が18個なので,「12+18×1/2-1=20」となります。
この日の授業は,ドットの中に描かれた三角形の面積を,周りの三角形の面積を引くなどして求めたあと,「ピックの定理」が授業者から示され,これで計算してみると,確かに同じ面積になっていることがわかりました。そのあと,自分で自由に作った図形をその「公式」で求めた後,「なぜこの定理が成り立つのか。」を考えるために,「長方形」が出てきて,この理由を考えていく展開となりました。
後の研究会で指摘させてもらったのですが,定理の「美しさ」などは,教師から示されても感じることはないでしょう。自分で見つけて初めて感じることです。自分で見つけていないので「なぜ」を考える動機も弱くなっています。いろんなものが,上から示されているのが一番の問題点だと思いました。
しかし素晴らしいのはこの教材で「なぜ」に向かおうとしたことです。私はこの部分は完全にあきらめていて,帰納的に公式自体の発見に特化しています。ところがこの「長方形」だと,何となくピックの定理の理由が見えてきます。
右のように補助線を入れると,中点には「1平方センチメートル」がくっついているので,その数がそのまま面積となります。その周辺には辺上の通点に対して「1/2平方センチメートル」が対応しています。ところが頂点になっている通点に対しては「1/4平方センチメートル」しか対応していません。したがってこの4点を1/2平方センチメートルとして計算してしまうと「1平方センチメートル」大きくなってしまうので,最後に1を引かなければならないというわけです。
もちろんこれが本当の証明ではありませんが,小学生ではこのような「Action Proof」で十分だと思います。
代案として,この日はドットの中に,長方形か正方形を作ることに特化し,ドットの数によって面積が変わってくることは帰納的に見せ,その後教えたピックの定理をほかの長方形で確かめ,「なぜ」に向かえば,この学校の児童であればなんとかできたのではないかと提案させてもらいました。
ピックの定理の新しい方向性を見せていただきました。ありがとうございました。