来年度に「県大会」,再来年度に「県レベルを超えた研究大会」を行う学校の先生から,指導案についての相談がありました。今年は県大会の前年ですが,秋に郡レベルで簡単な研究会を行う予定だそうで,3年計画の研究となるようです。私は5年生の担当となったので,その指導案の検討会をしました。
 5年生の「平均とその利用」で,単元の終末に「外れ値」を扱う場面を取り上げていました。啓林館の教科書では,外れ値は教科書の1/3ページくらいにトピック的に紹介されている程度の扱いですが,授業者は6年生の代表値の学習の素地として,やってみたいということでした。啓林館も,以前は外れ値をきちんと扱っていましたが,前回の教科書から姿を消していました。今回「トピック」という形で少し戻したようです。
 素材は「走り幅跳び」の記録でした。4回の記録を平均して「提出」するという設定です。2m80㎝程度の記録が3回と,1回だけ78㎝という記録になっています。この記録は異常で,「転んでしまった」という設定にして,「これを使ってどう平均を求めるか」を考えさせる展開でした。
 外れ値をどう考えるかは,「目的」によって変わってきます。この人の走り幅跳びの一般的な記録を知りたいのであれば,外す方がいいでしょう。しかし他の人と争って代表を決める,ということになれば話が変わります。優勝できる選手を送り出したいという組織の思惑があれば外すべきです。しかしこの人と争っている「ライバルたち」から見れば,失敗したのは自己責任なので入れるべき,となります。
 つまり,この問題は「設定」が大事になります。「記録の提出」では,目的がはっきりせず弱い感じがしました。(だから私は,目的がはっきりする「平熱を知る」という場面で実践しています。「その様子はこちら」)
 そこで,3人の記録を用意し選手を1人選ぶ,という設定にしました。2人は一般的な記録になっていて,3人目が先のような結果になり,外れ値を入れるか入れないかで,順位が変わってしまうような数値にする案でまとまりました。子どもたちが出す結論はどちらでも構いません。どんな話し合いがなされるかとても楽しみです。「代表を選ぶ」という観点でデータを見ると,決して「平均」だけがよいわけではないので,そのような話も出れば6年生につながります。
 授業者の先生は「適用題」として,データの数値が「0」になる問題を用意し,「これは外れ値ではない。」という結論になる問題を用意しているそうで,「nonA」を教えるとてもよい発想だと感心しました。11月に実際の授業が見られるのでとても楽しみになりました。

 

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