1月末に,私の出身大学の母校の附属小学校の研究会に参加させていただきました。算数の授業は全部で5本も行われたのですが,2コマの中に押し込まれたため,2本しか見ることができませんでした。3コマ目に「STEAM教育」の枠があったので,できればそこも算数に使ってもらいたかった。(授業は梯子して見ない)
 1本目は5年生の「割合」です。40周年キャンペーンを行っている2つの店があります。一方の店は「30%引き」をした後,さらに「10%引き」をするというサービスがあります。もう一方の店は「20%引き」をした後,さらに値引きをするようですが,その割合は空欄になっています。この空欄は何%なのかについて子どもたちから「20%」という声が上がりました。足して同じ割合になるからでしょう。そのためのしかけとして「40周年」としているのもうまいやり方です。
 この段階でほとんどの児童が,40%引きになると考えているようです。そこでまず「1000円」の米を買うといくらになるかを計算し始めました。その時子どもから,
「まず30%引きのねだんを出すんですか。」
という声が上がりました。一気に40%引きをやりたい児童もたくさんいたことでしょう。この質問に対し,
「そうしてみましょう。」
となったため,まず30%引きを計算し,そのあと10%引きを考えるという2段階で進めていきました。
 まず30%引きを考える「線分図」「数直線」(今回の図は両方の余地がある)が描かれていきました。これに関してはほとんど問題なく進められていたようです。大変丁寧な扱いです。
 この時の金額の求め方として「1000×0.7」になることは「四ます関係表」なども使いながら押さえられていきました。しかし素朴な「30%分を出して,定価から引く」というやり方には触れられないまま進んでいきました。これはやはりイメージを作るためにも,簡単に触れておく必要はあったと思いました。そのうえで「×0.7」が便利であることを押さえたいところです。
 さて,ここからです。この後「10%引き」をするので「図」をかくと,左のように2つに分かれました。下の方は,見かけ上は1人だけだったのですが,実際には他にもいたのではないでしょうか。「1」のとらえ方が違うのですが,その根拠として,
「さらに」
という割引を表す言葉で言及されていきました。あとの研究会で指摘させてもらったのですが,先の2つの計算の違いは「さらに」という言葉では正誤がはっきりしません。どちらでも取れてしまいます。「クーポンがあれば割引を10%上乗せする」というとらえ方の方が個人的には自然に感じます。2段階で割り引くのは,「レジを2回通る」ような感じがして不自然です。
 どちらの計算をするのかは「約束」として教師が「設定」すべきだと述べさせてもらいました。この教材は,早く「30%さらに10%」と「20%さらに20%」が同じ結果になると思っているところで,違う金額になることに気づき,その「なぜ」を考えていくところに面白さがあるからです。「さらに」の解釈を話し合うのは算数の授業とは言えないと感じました。
 こうなってしまった要因の一つとして
「現実世界との関連が強すぎたため」
があると感じました。日常生活で大切になる「安くなる」ということに興味を抱かせるのではなく,同じような計算をするのに「答えが違う」という算数的な驚きの方にウエイトをかけなけれはならないでしょう。その結果「子どもの入る余地が広くなりすぎた」と感じました。
 「現実世界との関連」や「子どもの入る余地」は,強固なものを目指すのではなく「適切な距離」を設定することが算数の授業では大切だと話をさせていただきました。

 子どもたちの表現力はかなり育っています。友達を大切にしながら対話を進めているのも好感がもてました。教材も面白いものでした。ありがとうございました。

 

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