初秋研修3本目は,2年生の「かけ算」の導入場面です。2年生を担任したことのない私ですが,過去に飛び込み授業で何回か行った数少ない2年生の授業の一つでもあります。私の授業と比べながら見せていただきました。
 左のような「アレイ図」を一瞬だけ見せる「チラ見せ」で導入です。私もよく使う方法です。最初は3個,次は6個でここまでは一瞬にして判断できました。しかし3つ目の18個のものは,さすがに一瞬では何個あるかは難しいようでした。
 これは当然のことです。「認知」に関わることですが,人間が一瞬にして数をとらえられるのは「5まで」と言われています。6以上になると難しくなります。これは子どもも大人も同様だそうです。右のアレイ図の一番左の場合は一瞬では数を判断できないので「数える」という作業が必要になります。ところが真ん中と右のものは一瞬で判断可能になっています。それは6を作るための「2」や「3」や「4」がとらえやすいように配置されているからです。これならば「2と4だから6だ」と瞬時に判断できるのです。
 この原理に立って教科書は作られています。1から5までの数は「かずとすうじ」という単元ですが,6以上になると「いくつといくつ」に変わります。その理由が上記の認知のためなのです。(先の6がすぐ分かったのは3ずつ2列に並んでいるから)
 さて,アレイ図をゆっくり見せてあげると子どもたちは「18だ。」と元気よく言ってきました。それを聞いた授業者は,
「どうしてそんなに早く分かったの。」
と言いながら,「めあて」を設定しました。
 ここから子どもたちは,アレイ図の中に書き込んでいきながら数え方を説明していきます。素晴らしいと思ったのは,
「タブレットがいい人はそれでやろう。プリントがいい人はもらってノートにやろう。」とハイブリッドに提示したことです。何が何でもタブレット,というのではない姿勢です。すべからずこうありたいものです。
 授業は,9のまとまりを作った方法と3のまとまりで作った方法を取り上げて進められました。反例として「3+6十5十4」に分けたものだと計算が難しい,ということも押さえられていました。こうして右のような「まとめ」をして授業は終了したのですが,私は疑問を持っています。それは,
「3+6+5+4に分けたものが計算が難しいのであれば,3+3+3+3+3+3に分けたものだって難しいはず。」
ということです。回数が多い分後者の方が難しい・時間がかかるともいえるでしょう。しかし実際の授業ではそのような反応は動画を見る限り見当たりませんでした。ということはこの授業が「かけ算九九を知っていることを前提」とした授業になっているということです。
 ただしこのクラスが特殊なクラスだとは決して思いません。日本全国同じようなものだと思います。かけ算,とりわけ「九九」は先取り学習の最たるものです。しかし私たち授業者はそれに甘えるのではなく,何も知らない白紙の子どもたちを対象に授業構成するべきです。
 代案が私の授業です。「その様子はこちら」
私の授業構成は,決して「全部の数がいくつあるかを問わない」ことです。それよりも「与えられた状況がどのような状況なのかを表現」することを求めています。式には「場面を表す」ことと「計算する」という2つの役割がありますが,私は前者で導入すべきだと考えているのです。
 教材とともに授業構成の進め方まで改めて考えることができました。元気いっぱいに発言して作業をする子どもたちとともに感謝したいと思います。                                               や

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