初秋研修2本目は,5年生の「単位量あたり」の導入です。部屋の広さと人の数を使って「混み具合」を考えるというオーソドックスな素材でしたが,いくつかの工夫が見られました。
 用いていたのは,最終的には左のようになる「部屋と人」です。単純にまとめてしまうと「3部屋18人」と「2部屋10人」の比較です。しかしこれをほぼ最後までまとめてしまわず,図を使って混み具合を考えていこうと,感性に訴える授業構想をされていました。
 最初に部屋を隠して上の1部屋だけを見せました。これだと部屋の広さが同じで,人数の違いがあるのですぐ判断できます。ここで単純にまとめてしまわず,子どもたちの方から,
「人が多くいる。」「集まっている。」「離れている。」など,状態を表す言葉を引き出す方向で進めています。
 次に隠していた部屋を2部屋目の半分くらいまで見せます。すると広さは同じですが,人数が逆転します。今度は9人と10人になってBの部屋が混んでいる,ということになります。一つの図の中でこのようにいろんな場面を見せるのはなかなかうまいしかけだなと思いました。この段階でようやく,
「同じ広さなら人数が多いほうが混んでいる。」
とまとめられました。
 こうしてようやく部屋がフルオープンされました。すると部屋の大きさが異なっていることになりました。これだとすぐには分かりません。こうして右のようなめあてが設定され,「自力解決」に入りました。
 ところがここで突然動画が終了しました。それはこの自力解決で,「公倍数を使った方法」や「単位量あたり」を使った児童が1/3しかいなかったためのようです。そのため,一度基本的なことを確認した後,次時の様子が動画で流れ始めました。今度は先ほどのAの部屋と広さも人数も同じなのですが,人の集まり方に違いがあるものが登場し,その比較の話し合いになっていました。広さも人数もさろっているのですが,子どもたちは「見た目」の混み具合からなかなか離れられない様子が伺え,この場面でのイメージの難しさを表しているように感じました。それでも何人かを動かして「均して」考えることで「同じ混み具合」という結論まで到達しました。この考えを「平均の考え」ということも押さえました。
 単位量あたりを論じるにはこの「平均の考え」の押さえがどうしても必要です。私はもっと早い段階(比較に入る前)でその話にもっていって,「比較するときは均した状態同士を考える」という押さえをしてから自力解決に入っています。「その様子はこちら」やりたいことは同じだと思います。
 さてこの場面での自力解決ですが,動画を見ていると,部屋をそろえるために子どもたちは「単純に一部屋を無視する」児童などの反応が見られました。どの部屋を無視するかで結論が変わってしまうのですが,子どもたちにはその意識がないようで,「一番下の部屋をなくす」という位置関係だけでやっているのを見て,5年生でも相当難しいことが分かりました。
 このあとは「公倍数」のアイデアや「単位量」の考えを,図の中で確認していき,最後に「式」で表現していこうとする展開でした。とても丁寧な扱い方をされていて,思いの詰まった授業であることが手に取るようにわかりました。素直な反応がとてもよかった子どもたちとともに感謝したいと思います。

 

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