晩秋研修2本目は,6年生の「場合の数」です。指導案を読んだとき,
「自分の実践とよく似ているな。」(「その実践はこちら」)
と感じたのですが,実際に見てみると,私のものより数段素晴らしい,ここ数年では最高の授業だった,という印象になりました。
 サイコロを使って双六をします。サイコロは「3が3つ」「2が2つ」「1が1つ」という目になっています。これは私の実践とほぼ同じ(1が5になっているだけ)なのですが,双六というシチュエーションが付け加えられています。
 左のABCの位置まで来ました。どこにいても一番速い場合はあと2回でゴールに上がります。今回のルールでは「きちんとゴールに止まらなければならない」ということになっています。そのルールで,AからCのどの位置にいたときが2回で上がれる確率は高いでしょうか。
 子どもたちのほとんどはAといいました。3が一番出やすいからです。次に多いのはcです。「近い」ということが影響しているようで,Bを選んでいたのは1人だけでした。その状況の中で,本当はどうなのかを「自力解決」していきました。同じ数字でも違いを明らかにしなければならないので,右のような記号をつけて区別しながらの作業となりました。
 この問題は,サイコロの「和」を考えることになります。私の実践では「積」を考えます。同じようなことに見えるのですが実は大きな違いがあったのです。子どもたちの自力解決を見ていると,「樹形図」が多く見られました。AからCを場合分けして,成り立つ場合だけを書いているやり方。考えられるパターンを全部書き出してから,それぞれに当てはまる場合を数えていくやり方。この2つは,「処理」という観点だけで見れば,前者の方が無駄はありません。しかしこの学校は「確率」を大切にしています。確率の場合は,
「全体像が見えた上で,考察の対象がこの部分にあたる」
というイメージ(分母と分子が両方見えるように)を感じてほしいので,全部書き出す方法はしっかり取り上げたいところです。
 表を使った児童もいました。ABC用の3つの表を2次元表にして考えていました。素晴らしいのですが,見ていてCの表が,先に述べた「全体像」が見えるようになっているので,これを利用して左のような見せ方をすることが必要なのではないでしょうか。(後の研究会に参加できていないので議論に上がったのではないか)
 結論を見てみると,予想では全く人気のなかったBが一番確率が高いことが分かりました。これは私の実践でも同じことです。しかし,逆に一番人気のあったAは,実はCよりも確率が低くなっているのです。このように「予想」と大きくかけ離れているところに「算数の面白さ」が潜んでいます。「なぜ」はすでに明らかになっています。
 私の実践は5を使って「積」にしています。それは「別演算なのに答えが同じ」になってしまうことを避けるためです。しかしこの実践は「1,2,3」で「和」にしたので,4になる場合が「2+2」と「1+3」でできるようになっているのです。そのために逆転現象が生まれるのです。この事実に気づいたとき,
「やられた。」
という思いになりました。「双六」というシチュエーションも私のものよりはるかに自然で,全てにおいて素晴らしい,といわざるを得ない実践だと感じました。
 この授業者の授業は2年前にも見た「その時の様子はこちら」のですが,授業の流し方なども本当に素晴らしくなっていて脱帽です。発想豊かで素直に考えていく子どもたちと共に大きな感謝をしたいと思います。

 

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