私の手元にある,日本の小学校算数科の学習指導要領に対する詳しい説明を述べた「解説書」「指導書」について考察していきたいと思います。
「小学校算数指導書 1960年 文部省」は,昭和26年に制定された「生活単元学習」の学習指導要領の反省の上に立ち,数学のもつつながりを大切にした「系統学習」と言われる学習指導要領です。今回は,「割合」について,みてみたいと思います。
まず「学年の目標・内容」の中で,小数と分数の加減乗除が全てはいるようになりました。その中で,
「乗法,除法については,数の範囲を小数,分数にまで広げるにあたって,それまでに指導してきたことを,比の三つの用法の考えでまとめることになっている。」
と述べられています。今当たり前のようにやっている小数・分数の乗除ですが,比・割合とは別のこととして取り扱っているのではないでしょうか。(領域が異なる)この時代,これほど「割合」を強く意識していたということが分かります。
内容では,1年生の「加法・減法」の中で「乗法・除法の素地」として,
「いくつぶん,はんぶん,はんぶんのはんぶん,あるいは2ばいなどがあげられる。このようなことばが,正しく使えるようにしていくこともたいせつである。」
と述べられています。今も教師の意識として持っておかなければならないことでしょう。
2年生では「数」「加法,減法」「乗法」に続いて「割合の考え方の素地」という項目が続きます。一体何を指導するのかと思い読んでみると,それは「分数」のことでした。今で言う「簡単な分数」ですが,日常用語として「二ぶんの一」「三ぶんの一」などと言えることが求められていて,数字として「1/2」「1/3」などという表示を,必ずしも要求していない,ことなどが注釈されています。
3年生では,この学年で導入される除法の「包含除」を比の第一用法,「等分除」を比の第3用法として,
「どんな場合にも除法がうまく適用できるようにすることが重要である。」
と述べ,この段階で除法の意味をきちんと理解しておくことが「割合の考え」につながる,とはっきり書いています。
4年生でははっきりと「割合」という指導項目が書かれ,その内容として,
「簡単な整数の関係でとらえる」
とありました。左のようなグラフを見たときに,AとCを「3と4の割合になっている」と捉えさせようとしています。これは完全に「比」の考えになっていて,難しいように感じるのですが,ある意味では「6000と8000だから3/4とか,0.75」等と,1つの数字で表そうとするよりは簡単なのかもしれません。
また,あまりのある割り算の処理を,比の第一用法でまとめることも求めています。今の感覚ではかなり難しいことで,高学年でも全員が理解,というわけにはいかないような気がします。
逆に言えば,「全員理解」を目指したものではなく,常に「素地」を意識して内容が作られている,という見方をした方が正しいのかもしれません。
5,6年になると,真正面から「割合」が入ってきます。百分率や円・帯グラフも出てきます。しかし面白い記述があります。それは,5年生の内容の中に,
「こどもの困難を考慮して,比の第一,第二用法を主ととして取り上げ,第三用法は,その簡単な場合を知らせる程度にとどめ,主として第6学年で指導することになっている。」
とあるのです。今は全部5年生でやっています。低学年から大変丁寧で難しい内容を入れていますが,こんな場面では今よりも手厚い配慮をしているのです。
「小学校算数指導書 1960年 文部省」は,昭和26年に制定された「生活単元学習」の学習指導要領の反省の上に立ち,数学のもつつながりを大切にした「系統学習」と言われる学習指導要領です。今回は,「割合」について,みてみたいと思います。
まず「学年の目標・内容」の中で,小数と分数の加減乗除が全てはいるようになりました。その中で,
「乗法,除法については,数の範囲を小数,分数にまで広げるにあたって,それまでに指導してきたことを,比の三つの用法の考えでまとめることになっている。」
と述べられています。今当たり前のようにやっている小数・分数の乗除ですが,比・割合とは別のこととして取り扱っているのではないでしょうか。(領域が異なる)この時代,これほど「割合」を強く意識していたということが分かります。
内容では,1年生の「加法・減法」の中で「乗法・除法の素地」として,
「いくつぶん,はんぶん,はんぶんのはんぶん,あるいは2ばいなどがあげられる。このようなことばが,正しく使えるようにしていくこともたいせつである。」
と述べられています。今も教師の意識として持っておかなければならないことでしょう。
2年生では「数」「加法,減法」「乗法」に続いて「割合の考え方の素地」という項目が続きます。一体何を指導するのかと思い読んでみると,それは「分数」のことでした。今で言う「簡単な分数」ですが,日常用語として「二ぶんの一」「三ぶんの一」などと言えることが求められていて,数字として「1/2」「1/3」などという表示を,必ずしも要求していない,ことなどが注釈されています。
3年生では,この学年で導入される除法の「包含除」を比の第一用法,「等分除」を比の第3用法として,
「どんな場合にも除法がうまく適用できるようにすることが重要である。」
と述べ,この段階で除法の意味をきちんと理解しておくことが「割合の考え」につながる,とはっきり書いています。

「簡単な整数の関係でとらえる」
とありました。左のようなグラフを見たときに,AとCを「3と4の割合になっている」と捉えさせようとしています。これは完全に「比」の考えになっていて,難しいように感じるのですが,ある意味では「6000と8000だから3/4とか,0.75」等と,1つの数字で表そうとするよりは簡単なのかもしれません。

逆に言えば,「全員理解」を目指したものではなく,常に「素地」を意識して内容が作られている,という見方をした方が正しいのかもしれません。
5,6年になると,真正面から「割合」が入ってきます。百分率や円・帯グラフも出てきます。しかし面白い記述があります。それは,5年生の内容の中に,
「こどもの困難を考慮して,比の第一,第二用法を主ととして取り上げ,第三用法は,その簡単な場合を知らせる程度にとどめ,主として第6学年で指導することになっている。」
とあるのです。今は全部5年生でやっています。低学年から大変丁寧で難しい内容を入れていますが,こんな場面では今よりも手厚い配慮をしているのです。
このような「割合」だけを学年を追ってみていきましたが,算数教育のエッセンスが全て詰まっているような濃い内容です。現代の授業者がバックボーンとして持っていなければならない「戒め」がたくさんあると感じました。