異分母分数の足し算に入ります。この場面を取り上げて研究授業をしたのが平成2年,その授業を元に県レベルを超えた研究大会で発表したのが平成3年になります。当時典型的な「問題解決型」の教師だったこともあり,「自力解決」を重視しながら「見通し」「筋道」をキーワードに発表したのは懐かしい思い出です。http://blogs.yahoo.co.jp/tamusi22/36244421.html
イメージ 1 あれから四半世紀が過ぎました。当時と違って,教科書通りの数値・題材で「自力解決」に入りました。当時と違うのは,「通分」までの授業でも量的にL(リットル)を用いていましたが,今回は「数としての分数」で進めてきました。この足し算の場面で初めて「量」が登場しました。それが影響したせいかどうかは分かりませんが,「自力解決」できた児童は半数弱という状況でした。私はこの段階で自力解決できるかどうかに大きな問題はないと思っています。それよりも,この問題に対し,どのように立ち向かっているか,という取り組み態度の方が大切です。
イメージ 2 右はある児童2人分の自力解決時のノートの様子です。上の児童は,よくある「1/2+1/3=2/5」としていますが,違和感を感じたのか,絵を描いたり違う答えにしたりしています。それでも納得がいかず「×」をいっぱい書きながら考えを進めています。
 下の児童は,最初に「面積図」(液量図)をかいていますが,分数を表す図の最大のミスコンセプションである「全体の1が違う」図になってしまいました。しかし自分でそれに気づき,全体を揃えた図に訂正しています。
 このように,「正解」にはいつも最短距離で到達するわけではありません。紆余曲折・思考錯誤しながら何とか正解に近づいていくのが実生活の問題解決ではないでしょうか。このノートにはその道筋が残されています。「消しゴムを使わない」というルールもそれですが,とにかく何かやってみよう,という態度が素晴らしいと感じました。
イメージ 3 左の児童も,思考錯誤しているのは同様です。メインのノートの部分だけ見ると,液量図で失敗しているようですが,ノートの周りをよく見てみると,「線分図」「パターンブロック図」「ピザ図」なども見られ,これまで自分たちが利用してきた「武器」を全て出し尽くして考えを進めようとしています。これこそ「問題に立ち向かっている姿が残ったノート」と言えるでしょう。
イメージ 4 練り上げの最初の発問は,
「答えはいいから,答えを出すための式はどうなるかな。」
でした。何気ない発問ですが,1/3くらいの児童は戸惑っています。「答えを出すため」という何気ない言葉の中に子どもと教師のズレがありました。子どもたちは「この式のままでは答えが出せない。」という思いがあります。だから何を答えればいいのか戸惑っているのです。中には「通分」してしまった式を答えようとしたものもいたようです。
 次に「2/5」というミスコンセプションの答えの誤りを考えます。こちらは,
「2/5だと1/2より小さくなっているからおかしい。」
という鋭い発言が最初に出たので,「復唱」を求める活動などを入れて全体に浸透させていきました。その上で,「通分」の方法に関しては,「あっさり」と認めていきました。もちろん,最低限の「単位の考え」は押さえながら。
イメージ 5 その後,「まとめ」をして,教科書の練習問題で定着に向かいます。通分して答えを求める「式の書き方」はきちんと指導します。
 研究授業・発表でよく取り上げられる場面ですが,意外と難しさがたくさん含んでいることが改めてよく分かりました。