「学習指導要領から学ぶ」第3回は,昭和43年の「現代化」です。昭和39年生まれの私は,その学習指導要領で小・中学校を過ごしました。まさに「現代っ子」です。(笑)
 まず現在との大きな違いは,「授業時間」です。この学習指導要領では,週当たり,
「1年生3時間」「2年生4時間」「3年生5時間」「4~6年生6時間」「中学校」4時間」だったのです。自分の記憶をたどってみて,
「小学校高学年では,算数が2時間ある日があったんだ。」
と,思い出せないのですが,これが事実です。現在は,「1年生4時間」「2年生以上5時間」ですので,小学校だけで考えると,35時間多かったわけです。なお,中学校は,現在「3.4.3」ですので,義務教育トータルで「105時間」も多かったのです。これだけでも,この学習指導要領にかける意気込みが分かるでしょう。
 この学習指導要領は,ソ連がアメリカに先駆けて宇宙船開発に成功したことにショックを受けたアメリカ(宇宙船の名前をとって「スプートニックショック」と言われている)で起こった「現代化」が日本に影響したのです。
 この学習指導要領の「目標」は,
「日常の事象を数理的にとらえ,筋道を立てて考え,統合的,発展的に考察し,処理する能力と態度を育てる。」
とあり,「数学的な考え方」を具体的に表した言葉が踊るようにになってきました。この学習指導要領作成に関わった片桐先生は,日本の数学的な考え方の第一人者であることがよく分かります。http://blogs.yahoo.co.jp/tamusi22/37422974.html
 内容的には「内容を明確にする」「単純にする」「統合する」「古いアイデアを広げる」「新しいアイデアを導入する」が一般的なねらいでした。具体的には,
1年生「ものの集まりについて(中略)情報や除法に発展する基礎的なことを理解させる」
2年生「週,月,年のしくみ」
4年生「四則の相互関係と,計算が計算法則をもとにしていることに着目する」
「集合に着目するなどして,資料を正しく分類整理する能力を伸ばす」
5年生「観点を決めると,整数はいくつかの集合に分けられること」
「基本的な平面図形について,包摂関係などに着目して理解をまとめること」
6年生「整数および小数の集合は,分数で表される数の集合に含まれること」
   「数直線上の点との対応関係について調べること」
「円柱・円すいなどが回転体とみられること」
「(前略)例えば式の形に着目させる」
等が挙げられています。図形や数に関して,「相互関係」「包摂関係」を考察するように述べられ,そのために「集合」が用いられているのが最大の特徴と言えるでしょう。この考え方は,現在でも大切にする必要があります。概念や概念の関係を「集合の考え」で見ることで明確になることは多いでしょう。とくに「nonA」の考え方などのその典型と言えます。過去最高レベルの指導要領と言えるでしょうが,大切な考え方がたっぷり詰まっています。これを小学校の全ての先生に委ねるのには無理があったのかもしれませんが,私たち算数教育を専門にするものにとっては常に心がけておくべきことがたくさんあります。
※ 参考文献 2015 9月号 特集「歴史に学ぶ算数教育」