本校に,大学卒業したての新任の若い先生がいらっしゃいます。初任者研修で,一年間に3回の研究授業をしなければいけないことになっていて,2回目の研究授業を「校内大研」扱いで行うことになりました。その教科が算数だということで,指導教官や本人から私に,「相談にのってください。」と言われていたので,放課後検討会をすることにしました。
単元は2年生の「三角形と四角形」です。第1時か第2時かを迷われていましたが,第1時をすることを決め,詳しい検討に移りました。この場面は「三角形・四角形」を初めて学ぶ場面です。そこで教科書を眺めてみることにしました。
たくさんの動物の絵があり,それらの動物を点と点をつないで「家をつくりましょう」という設定です。私が臨時教員時代,唯一9ヶ月だけですが,2年生を担当したときにも同様の展開で授業したのを覚えています。教科書のこの流し方は,他の図形学習でも同様の流れで,
「図形を構成」
「できた図形を弁別」
「弁別を元に定義」
というパターンです。昔から変わりませんが,細かい設定はともかく,普遍的な展開だと思います。
「今も同じなんだなあ。」
と思いながら,もう少し教科書を眺めていて,「愕然」とさせられるものが目に入ってきました。
子どもたちに与えられる「絵」を見ました。直線でつなぐための「点」には,何と「記号」がつけられているのです。しかもご丁寧に,ライオンを囲む点には「ラ」,カバを囲む点には「カ」と。以前は,点だけがあって,自由につなげていたので,間違ってつないでしまうようなことも起こりました。(そのために,「できるだけ少ない直線でつなごう」などと指示することもあった)
「昔だったら,間違ってこことここをつないじゃっ…,ええっ。」
とさらに驚愕の事実を見つけてしまいました。何と,間違ってつないでしまいそうになる点と点の間には「雑草」を生やし,それを防ごうとしているのです。ここまでやらなければいけない時代になってしまったのでしょうか。とにかく「間違えないように,間違えないように。」という,過保護丸出しの教材になってしまっているのです。
「図形の構成」は子どもが自分の意志で,主体的に考察図形作ることから学習をスタートさせようとする発想です。もちろんしかけがあって,考察対象となる図形が自然に表れてくるような設定はしますが,子どもから見れば,自分で作り上げた,という自信が持て,それが次の活動の意欲となるはずです。ところがこのような展開では,指示されたとおり線でつないでいくだけの「受け身」の学習でしかなく,それならば最初から先生がいくつかの三角形や四角形を見せて,仲間分けさせた方がはるかに時間短縮になるでしょう。
私は代案として,左のように,
「一匹の動物の回りに,5つの点を配し,自由に家を作ろう。」
とやる方法を提唱しました。これならば,児童が主体的に考察対象の図形を構成しますし,一人ひとりのアイデアの「多様性」を引き出す展開にもなっています。また,結果的に表れてくる図形は,「三角形3種類」「四角形2種類」と,教科書とほぼ同じ数なので,(五角形が出ますが,それは除外して構わないでしょう。)先の展開は全く同じことになっています。
と,こう説明しました。指導教官は,「これはおもしろい。」というのですが,本人は,「自分にできるだろうか。」と不安がっています。ほんのわずか「教科書を離れる」ことが心配なのです。これに関しては,経験の少ない初任者なので仕方ないと思いますが,一つ一つそれを乗り越えていかなければなりません。授業構成は,教師の都合で決めるのではなく,子どもの顔を思い出して,「一番笑顔になりそうな展開」で行うという基本姿勢を感得してほしいと思います。実際の授業がどうなるかは分かりませんが,私自身も原点に戻って考える機会になりました。感謝したいと思います。
単元は2年生の「三角形と四角形」です。第1時か第2時かを迷われていましたが,第1時をすることを決め,詳しい検討に移りました。この場面は「三角形・四角形」を初めて学ぶ場面です。そこで教科書を眺めてみることにしました。

「図形を構成」
「できた図形を弁別」
「弁別を元に定義」
というパターンです。昔から変わりませんが,細かい設定はともかく,普遍的な展開だと思います。
「今も同じなんだなあ。」
と思いながら,もう少し教科書を眺めていて,「愕然」とさせられるものが目に入ってきました。

「昔だったら,間違ってこことここをつないじゃっ…,ええっ。」
とさらに驚愕の事実を見つけてしまいました。何と,間違ってつないでしまいそうになる点と点の間には「雑草」を生やし,それを防ごうとしているのです。ここまでやらなければいけない時代になってしまったのでしょうか。とにかく「間違えないように,間違えないように。」という,過保護丸出しの教材になってしまっているのです。
「図形の構成」は子どもが自分の意志で,主体的に考察図形作ることから学習をスタートさせようとする発想です。もちろんしかけがあって,考察対象となる図形が自然に表れてくるような設定はしますが,子どもから見れば,自分で作り上げた,という自信が持て,それが次の活動の意欲となるはずです。ところがこのような展開では,指示されたとおり線でつないでいくだけの「受け身」の学習でしかなく,それならば最初から先生がいくつかの三角形や四角形を見せて,仲間分けさせた方がはるかに時間短縮になるでしょう。

「一匹の動物の回りに,5つの点を配し,自由に家を作ろう。」
とやる方法を提唱しました。これならば,児童が主体的に考察対象の図形を構成しますし,一人ひとりのアイデアの「多様性」を引き出す展開にもなっています。また,結果的に表れてくる図形は,「三角形3種類」「四角形2種類」と,教科書とほぼ同じ数なので,(五角形が出ますが,それは除外して構わないでしょう。)先の展開は全く同じことになっています。
と,こう説明しました。指導教官は,「これはおもしろい。」というのですが,本人は,「自分にできるだろうか。」と不安がっています。ほんのわずか「教科書を離れる」ことが心配なのです。これに関しては,経験の少ない初任者なので仕方ないと思いますが,一つ一つそれを乗り越えていかなければなりません。授業構成は,教師の都合で決めるのではなく,子どもの顔を思い出して,「一番笑顔になりそうな展開」で行うという基本姿勢を感得してほしいと思います。実際の授業がどうなるかは分かりませんが,私自身も原点に戻って考える機会になりました。感謝したいと思います。