

そこで次は,3通りに分かれてしまうのはどうしてなのか,最初に選んだ4桁の数字を眺めてみることにしました。漫然と見ていたのでは分かりにくいので「最初に選んだ数」だけ緑色で板書し,注目させるようにしかけをしてありました。みんな悩んでいる中,一人の児童から発言が出てきました。

というのです。事例を見てみると確かに,百と十の位の数が同じ数になっています。そこでそのような数字をあえて作り,計算して確かめることにしました。2887や3442でやってみると確かにその通りになっています。子どもたちは驚いています。帰納的ではありますが,まず一つの問題が解決しました。
次は9999と10890を比べます。どちらも同じ数がなく,バラバラの数で作られています。なかなか違いを見つけることができません。そこで私の方から,こんな場合の考え方を示しました。
「さっきの10989の時は,真ん中の2つの数が関係していました。なのでここでも真ん中の2つの数に注目してみるといいんじゃないかな。」
誘導ですが,この場合は仕方なく出しました。もちろんこれでもすぐには発見できません。そのうち,

「でも違うやつもあるよ。」
というやりとりが起こりました。これはチャンスと思い,
「なるほど,真ん中の2つの数のつながりを見ようとしたんだね。それはいいんじゃないかな。もっと他のつながりを考えて見ようよ。」
とさらに誘導していきます。すると一人が,
「9999になるときは左(百の位)が小さくて,10980になるときは左が大きい。」
と言うのです。確かに全ての事例がそうなっていることを全体で確認します。
この教材はもちろん「参考書」があり,中央の2つの数の大小関係で最終計算の結果が変わってくることが記されています。私はそれを参考にしてこの授業を行いました。子どもたちの目が点になり,喜ぶ顔を思い浮かべながら授業構成をしました。事実,この秘密が分かったとき子どもたちは思わず膝をたたいていました。ところがある児童が最後の段階で,

と言うのです。さらに「おれも見つけた。」という者も出てきました。正直「どうせ計算間違いだろう。」と思いながら,発表させてみました。
するとどうでしょう。確かにこれ以外の「990」になってしまうのです。こんなことは「参考書」のどこにも書いていませんでした。目が点になったのは私の方だったのです。これは,真ん中の2つではなく,逆の外側の2つ(千の位と一の位)が同じ数だった場合,最初の引き算でこの2つの位の数が消去されてしまいます。(したがって,「何百何十」となる。)ということは真ん中の2つの位にしか数が残りませんので,計算結果は「2桁の時の結果」である99に一の位の0がついた「990」になるのは当然なのです。(なお、この条件は3桁の場合は「左右対称」になるのであり得ません。)
参考書を全て信じた私と,既成概念を持たず教材に向き合っている子どもたち。また子どもに教えられました。これだから「算数の授業」はやめられないのです。