啓林館の教科書での単元名は「たし算とひき算」となっています。ねらいとしては「暗算」を学習する単元です。教科書は全部で6社あり,それぞれに特徴があります。啓林館の特徴の大きな傾向として,「暗算を大切にする」という考えがあります。実は私もその考え方に賛成の立場の一人です。筆算ばかりが大切にされてしまいますが,簡単な計算は暗算でできるようになってほしいと考えています。
まず,一問だけ三桁同士の加減筆算の練習をした後,
「今日は筆算を使わず,暗算で計算します。」
と本時のねらいを告げました。そして筆算と暗算の特徴を発表してもらいました。
「書く・書かない」「縦と横」「念頭と紙・鉛筆」など,子どもたちの素直なイメージが出てきました。
ここから「フラッシュカード」で問題を提示し,解答させていきます。最初は「何十+何十」ですので,みんな簡単にできます。頭の中でどうやっているかを聞くと,
「十の位の6と3を足した。」
と言うので,計算に使った部分だけを色チョークで囲み,押さえておきます。
次に,一方の数だけ,一位数のある計算を出題します。(50+27)すぐに答えは見つかるのですが,どう計算したかを問うと,「十の位から」と「一の位から」がほぼ半々に分かれたのです。これは意外な反応でした。この計算であれば,ほとんどの児童が,十の位だけを足し,一の位は付け足すだけだと思っていたからです。もちろんそんな児童が半数はいるのですが,逆に筆算のイメージから脱却できない児童がこれだけいるというのはショックでした。そんなとき一人の児童が,
「十の位の計算はちょっと難しいけど,一の位は簡単だよ。だから十の位の方を先にした方が簡単だよ。」
と発言しました。この発言を何人かに復唱させ,イメージ化していきます。
十の位から計算する方法をいくつかのフラッシュカードで練習しいておきます。一位の位が0になるのが,たす数・たされる数に来るもの両方を練習しておきます。
そしていよいよ,どちらの数も空位がない問題に入ります。(繰り上がりなし)ここでは意見が分かれます。どちらの計算も難易度に差はありません。ならばどちらからやっても差異はないように思えます。ここは教師の「介入」が必要です。
「暗算は頭の中でやるから間違える可能性があります。例えばどちらかの位で計算結果を1間違えたらどうなるかな。」
と発問します。53+42の場合,十の位を間違えると85,一の位を間違えると94になります。正しい結果は「95」です。これを見て,
「これってどっちがましかなあ。」
と尋ねました。すぐにピンと来る者と,「ましってどういう意味」と感じる児童に分かれます。そうでしょう。子どもたちにとって計算結果は「正解か間違い」しかないのであって,「まし」などということは存在しないのでしょう。しかし暗算は,日常生活でも必要になってくるものです。そんなとき,より小さいミスに止めておくためには,大切な上の位(上の位)を確定させておき,下の位を後で考えることでミスを少なくすることができるのです。そんな話に誘導していった展開になりました。
「ノートにしゃべろう」に,「繰り上がりがあったらどうするんだろう。」と書いた児童がいました。「~な時は」と考えるのはとても数学的です。また,この1時間で「繰り上がりのない足し算まで」しか扱えなかったのはまずいという見方もできます。しかし私自身が「暗算を大切」にしたいという思いから,じっくり進めることを決めました。技能的にはとても難しいものです。みんながみんなできるようになるわけではないでしょう。それでも「簡単な計算は暗算でやる」という態度だけは忘れてほしくないのです。そんな態度を求めての1時間だと考えています。

「今日は筆算を使わず,暗算で計算します。」
と本時のねらいを告げました。そして筆算と暗算の特徴を発表してもらいました。
「書く・書かない」「縦と横」「念頭と紙・鉛筆」など,子どもたちの素直なイメージが出てきました。

「十の位の6と3を足した。」
と言うので,計算に使った部分だけを色チョークで囲み,押さえておきます。

「十の位の計算はちょっと難しいけど,一の位は簡単だよ。だから十の位の方を先にした方が簡単だよ。」
と発言しました。この発言を何人かに復唱させ,イメージ化していきます。

そしていよいよ,どちらの数も空位がない問題に入ります。(繰り上がりなし)ここでは意見が分かれます。どちらの計算も難易度に差はありません。ならばどちらからやっても差異はないように思えます。ここは教師の「介入」が必要です。

と発問します。53+42の場合,十の位を間違えると85,一の位を間違えると94になります。正しい結果は「95」です。これを見て,
「これってどっちがましかなあ。」
と尋ねました。すぐにピンと来る者と,「ましってどういう意味」と感じる児童に分かれます。そうでしょう。子どもたちにとって計算結果は「正解か間違い」しかないのであって,「まし」などということは存在しないのでしょう。しかし暗算は,日常生活でも必要になってくるものです。そんなとき,より小さいミスに止めておくためには,大切な上の位(上の位)を確定させておき,下の位を後で考えることでミスを少なくすることができるのです。そんな話に誘導していった展開になりました。
