

「万があるから,そこで分けて書けば簡単だよ。」
と構造を見抜いた説明をしてくれました。4桁ごとに書いていくイメージをまとめておきます。

「千万も10倍するとどうなるかなあ。」
とたずねます。すぐに「億」という答えが返ってきたのですが,
「そうかなあ。もっと素直な人はどういうだろうねえ。」
と切り返します。何人かが「あっ。」と言いながら手を挙げました。
「万万だ。」
そう,普通に考えれば一万・十万・百万・千万と来れば,その並びに従って「万万」となるはずです。これを聞いた別の児童が,
「だったら,その次は十万万だ。」
と叫びました。素直な反応だと思います。このように,先取り学習に毒されない自由な発想は,子どもたちを喜ばせてくれます。(万万が億,というとらえ方は,4年生でも必要になってくる。)


この時間で「一億」まで数が広がりました。私たち人間が,一億個のものを実際に数え上げるのは不可能でしょう。おそらく1万個くらいまでが限界でしょう。つまり3年生のこの単元の学習は,「実際に経験できないことを,これまでの経験や仕組みから,こうなっているはずだと考えて,頭の中だけで進めていく」考えと言えます。昭和40年代に活躍され,数学的な考え方の研究の第一人者である原弘道先生は,このような考え方を「先験化の考え」と呼んで,数学的な考え方の一つとしていました。