イメージ 1 くり下がりの表記として左の3つが見られました。一番左は,借りられて1減った数字だけを書き,借りてきた10は書かずに念頭で処理しています。実は教科書ではこれが正解となっています。特に「本文」にはこれ以外の記述は見られません。
 一番右の,上に10を書く方法は,一桁飛ばしてくり下がりがある場合(孫型)に,ややこしくなるために補助的に使うとよいことが,「指導書」に記載されていました。すごく丁寧で,操作の原理通りだと思いますが,「思考をせずに計算しようとする筆算」にふさわしいかどうかは疑問と言わざるを得ません。
 真ん中の方法は,教科書や指導書のどこにも見られませんが,一般的には結構普及している記述ではないでしょうか。私も子ども時代これに近い書き方で習った記憶があります。ただしもう少し遠慮がちに,左上に小さく1を書いていたように思いますが。
 これらは個別指導から生まれてきたものだと思われますので,どれがいいとかはないと思います。しかし,教科書が一番左端の表記になっているのには当然訳があります。
 1年生で初めて「くり下がりのある引き算」を学習するとき,よく言われる「減減法」と「減加法」があり,(「数え引き」や「5-2進法」もあるが),どちらでもよいようなのですが,最後は「減加法」にまとめるのが一般的です。それは「筆算」を意識してのものです。減減法を筆算で用いると,最初の「減」は「下から上を引く行為」となり,間違いを起こす危険性が高くなります。減加法の場合は常に10から引きますので,「10の補数」がしっかりイメージできていれば,すぐに一桁+一桁の足し算帰着できます。
 横書きで「13-7」が難なくできていたはずの児童が,急に縦書きになった途端,「10を視界に入れなければ計算できなくなる」というのはおかしいでしょう。
 1年生のくり下がりの引き算からずっと続く,筆算形式の系統があるのです。個別に「てだて」を作ることはもちろん大切なことですが,必要でない児童は系統に従わせ,てだてが効いた者には「離れる努力」もさせるのが教育だと思います。