

「繰り上がりを書いていない。」
というのです。前回に綴りましたが,この書き方は子どもに任せています。必要な児童はかき,必要なければ書かなくてよいというスタンスで進めています。だからその子に責任はないのですが,「書く派」から見ると書かないことが気になるようなのです。
その指摘を聞いた児童は,
「あっ,そうか。」
と戸惑ってしまい,黒板の前で立ち止まった挙げ句,十の位に繰り上がりを書いて,答えを変えてしまったのです。すぐに新たな指摘が入り,「やっぱりあってたんだ。」と言いながら修正しました。
これが子どもの姿です。自信たっぷりにやっているように見えて,実は周りの意見に大きく影響されてしまうのです。この児童は,計算練習ではいつも一番にできて自慢げにしていたような子でしたが,それでもこうなってしまうのです。

筆算の書き方はよく見ていると本当に多様です。繰り上がりの書き方でも,例えば「5+7」であれば,答えの12の順に,「繰り上がりの1を書いて次に答えの2を書く」者と「答えの2を書いて次に繰り上がりの1を書く」者に分かれます。本人のイメージもあるでしょうし,これまでの指導者の方針(そんな大げさではなく,たんなる個人の癖かも)も影響しているのでしょう。
そんな一人一人の鉛筆の動かし方に注目していると,「筆算もおもしろいなあ。」と少しだけ思えるようになってきました。