イメージ 1 昨日,新聞の見出しが目に飛び込んできました。「小学生の理数学力向上」です。しかも私がとっている地方紙とはいえ一面トップに出ていましたので大変な話題のようです。その横には「脱ゆとり」で改善か,の文字も踊っています。そこで内容を詳しく読んでみました。
 2011年度に実施されたTIMSSの結果が公表されたようです。TIMSSとは「IEA」と呼ばれる「国際教育到達度評価学会」が行う,数学・理科についての到達度を測る調査(2011国際数学・理科教育動向調査)のことです。よく似た調査に「PISA」というのがありますが,こちらは一般的によく知られているOECD(経済協力開発機構)が行う,知識活用や課題解決能力を測る調査です。(多分に「経済界」で活躍できる人材を測るためという側面が強いように感じます。)2つの調査は近年,必ず結果が報道されるようになっていますが,PISAの方は初めての調査が2000年ですので10年余りの歴史しかありません。私たち教員が「国際学力調査」と言えば,今回のTIMSSの方をイメージすることが多いと思われます。(歳をとっているから?)
 蛇足だと思いますが,2000年にPISAの第1回の結果で,世界トップだと思われていた日本が1位ではなく,そのすぐ後に発表されたTIMSSで前回より順位を落としていたことから「学力低下論」がわき起こったのです。得点や参加国数の変化などお構いなしに,順位のみで一喜一憂したのです。
イメージ 2 さてTIMSSでは,そのような参加国数の変化に対応するため,1995年の国際平均を500点に設定して,統計データを公表しています。結果,日本の算数(小4)は,前回(548点)より11点上がった559点に伸びていました。しかし順位は韓国に抜かれて4位から5位になっていました。各種学力調査の受け止め方も少し成熟してきたようで,この順位を下げたことについては触れられていないようでした。どちらかと言えば「学力低下には止めがかかりつつある」という論調のようです。
イメージ 3 文科省はその理由を「ゆとり脱却」「授業時数増加」と分析しているようです。私はそのような結果には余り興味はなく,それよりも公表された「設問」を眺めてみました。新聞に載っていたのは左の2問です。見えていない部分を考えながら箱の数を考える問題が算数の代表として載せられていました。私は5年生の「体積」の学習で,単位立方体を学習した後に,これに近い問題を子どもたちに出題しています。http://blogs.yahoo.co.jp/tamusi22/36626470.htmlこの問題は,一般的な成績が良い児童の中にも,見えていない部分が想像できず,全く答えられない児童がいます。空間概念が影響しているのでしょうか。
 この問題は,幼児や小学生を対象にした「知能検査」のようなものにも見受けられる問題です。経験や想像力はもちろん大切なことだと思いますが,この問題に答えられることが「学力」とつながるのかどうかは疑問が残りました。この問題に答えられるようになるために,算数の授業で何をするか,というのはとても難しいところだと言わざるを得ません。
 一方,下の中学の問題は,おそらくねらいはよく似ていると思われますが,単に空間概念だけでなく,どういう置き方をすればよいかを考える際に「約数」「倍数」の考えなども必要になってきます。小学校でも「整数」の単元の活用場面などで使えそうで,良問だと感じました。
 問題が玉石混淆なのはどんな調査でも当然だと思いますが,TIMSSの問題は,長い説明を要求したり,長文を読解してからの問題だったりではないようで,子どもにはとっつきやすいかもしれません。とりあえず昨日の新聞からの私の感想の速報を綴らせてもらいました。冬休みにでももう少しじっくりこの調査問題について分析してみたいと思いました。