某附属小学校研究発表会2本目の授業は6年生の「図形をかこう」でした。課題は左のような「1点を通り,1つの直線の平行な直線を,定規とコンパスだけでかく。」というものでした。
普通小学校では4年生でこのような直線をかかせますが,このときは1組の三角定規を使って作図します。しかしここでは三角定規を使わずにかかせようとしているのです。指導案を読んだとき,
「小学生でこれができるかなあ。」
と思ったのですが,実際の授業では子どもたちが結構かけていたのです。驚きながら観ていて,予想以上にできる理由が見えてきました。2つの「しかけ」が功を奏したと思われます。
この作図は,左のように「平行四辺形」の性質を利用する必要があります。つまり与えられた状況から平行四辺形がかければ成功なのです。これに気づくのが秘訣です。そう考えると,この問題では「点ア」や「直線A」というのは本来必要のない情報です。1本の直線と1点だけ与えるのが普通でしょう。しかしあえてこのようなシチュエーションにすることで,「平行四辺形をかけばいいんだ。」というヒントが包含されているのです。子どもたちはそこに目が向いたようです。
ところが子どもたちの多くは平行四辺形ではなく「ひし形」を作図する方法をとっていました。「別に同じじゃないか。」と思われるかもしれません。しかしこの平行四辺形の作図の場合底辺となる「辺アウ」は「任意の長さ」になります。小学生にとってこの「任意」という考えはとても難しいものではないでしょうか。与えられれば動けますが,「何でもいい。」と言われると逆に動きにくくなるのです。
ところが今回の課題では「辺アイ」が見えているのでこの長さを使ってやろう,と思えるようになっているのです。これが2つ目の「しかけ」だと思われ,すばらしいとうなりました。(研究会に出ていないので意図的だったかどうかは分かりませんが,確実に影響していたと思います。)
「なぜ」を追求する部分は少し「教材の論理が勝っているな。」と感じましたが,全体の授業構想やしかけは本当にすばらしく,勉強になりました。反応のよかった子どもたちと共に感謝したいと思います。